『実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。』インタビュー・前編

「ペニバンを着けたら、自分になれた」――女という性を壊したかった「私」の衝動とは?

2018/04/09 16:00

「友達がいない」と吊し上げられて

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(C)ペス山ポピー/新潮社


ペス山 
“トレジャーシステム”は、クラスで良いことをした子がいたら、「◯◯くんがこんなことをした」と先生に報告するシステムなんですが、それが悪いことにも適用されて、“通報”されるんです。わたしは友達がいないことが原因で、「この中に友達がいない人がいます! 手をあげなさい!」と、先生に吊るし上げられました。自分もみんなも、わたしに友達がいないことを知っているから、チラチラと見てくるんですよね。「すいません、友達、いないです……」と手を上げざるを得なくて。それで立たされた上「みなさん! この人には友達がいません! 仲良くしてあげてください」と……。なんだこの私刑は、と感じました。

――すごい体験をされましたね。

ペス山 その時期は全てがトラウマで、自分の中でも「わたしは友達がいない」という印象が強いです。だけど今はなんだかんだ、4人の友達に恵まれていますから、結構“逃げどころ”がある人生だと考えてはいますけどね。

――「友達がいない=悪」と刷り込まれてしまったんですね。それが、中学校の“面白キャラ”とつながっていくんですか?

ペス山 そうなんです。小6になって、無理に性格を変えました。スポ根漫画のように、バラエティ番組をずっと見て、明石家さんまさんや土田晃之さんみたいになりたくて、話し方や返し方を真似するようにしました。「こう話せば人気が出る!」と思って。それで実践して、最初はうまくいかないけど、小学生でそんな勉強する人なんていないじゃないですか。だからちょっとずつは、当社比としては面白くはなっていくんですよ(笑)。それが功を奏して、友達がいない状態から抜け出すことができました。躁的な、ピエロ的な明るさを身につけて、でも無理矢理だから痛々しいんですよね。「おまえ、ずっと演技しているみたいだよな」と見抜いて去っていく人もいました。それでも結局は限界が来てしまい、中学の後半では暗い性格に戻りましたが。


話を伺うほど、ひたすらストイックに自分を“追い詰める”エピソードばかりが出てくるペス山さん。「私は 私の手で 自分を投獄する」と作中で綴るように、繰り返し出てくる“牢獄”のイメージは、そのまま心の中の描写なのだろう。そんな、自身を律する気持ちが人一倍強いペス山さんが「わたし、ヤバくない?」と自覚しつつも止められなかった“性衝動”とは、どのようなものだったのか。

後編に続く・4月10日公開予定)

最終更新:2018/04/10 15:46
実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。(1) (BUNCH COMICS)
「トレジャーシステム」が恐怖すぎて震える