サイゾーウーマンコラムW不倫15年「彼の最期に立ち会ったのは私」 コラム 長期不倫ルポ「私たちってヘンですか?」 W不倫15年、彼が脳梗塞で帰らぬ人に――「彼の最期に立ち会ったのは私」と語る女の胸中 2018/03/28 21:00 インタビュー長期不倫ルポ 彼の奥さんではなく、私が最期に立ち会った 「とうとう我慢できなくなって、前の職場で一緒だった人にさりげなくメールをしてみました。するとやはり彼が倒れた、と。イヤな予感は当たっていました。しかも1カ月たってもまだ目を覚まさないというんです」 あまり詳しく尋ねるのも疑惑を生む。適当なところでメールのやりとりを切り上げた。ただ、入院先は聞いた。元の仕事仲間なのだから、お見舞いくらい行ってもいいのではないか……。ミヤさんの思いは日に日に強くなっていく。どんな姿でもいい、彼に会いたかった。一方で、そんな彼を見るのが怖い。彼は、私にそういう姿を見られたいと思うだろうかと考えると、なかなか足が前に出ない。 迷いに迷ったが、ある日、いつものように腕時計をつけながら、彼が呼んでいると感じた。その日、仕事が終わると彼女は彼の病院に駆けつけた。病室の前に行くと、医師や看護師が出たり入ったりと騒がしい。 「ご家族の方ですか」 看護師に問われてふっと頷いてしまった。中に入ると、彼にはたくさんの管がつながれている。思わず枕元に立って彼の手を握った。 「延命はしない……ということでしたから」 医師がぼそぼそと言う。ミヤさんは頷きながら、彼ならそう言うだろうと感じていた。彼の手に一瞬、力がこもった。彼女もぎゅっと握り返す。耳元で「ミヤよ」と言うと、彼の目からつっと涙がこぼれた。次の瞬間、彼の手から力が抜けた。 「思いがけず、私は彼の最期に立ち会ってしまったんです。彼の親友という方に後から聞いたら、彼の奥さんとお子さんは、その日に見舞って帰ったところだったらしい。病院から連絡があってあわてて戻ったのですが、間に合わなかった、と。私は彼の手から力が抜けた後、すっと室内から立ち去りました。病院側も家族側も、そのことについては触れず、騒ぎにはならなかったようです」 彼女自身、そのときの自分の行動をよく覚えていないという。もしかしたら、私の魂が彼に会いに行っただけかも、と小さい声で言った。 「お葬式の案内は、彼の親友からもらったんですが、私は行かれなかった。彼の死を認めたくなかったんだと思います。その後、彼の親友という方に会って、彼の話をいろいろしました。一緒になるはずだったのに、1人で先に逝くなんて嘘つきですよね……」 彼女の目が潤んだ。最期に立ち会えたのは、やはり彼が呼んだのかもしれない。長年の不倫では、連絡が取れなくなったままで、亡くなってしばらくたってから、ようやく知り合いから聞かされたという話もある。亡くなったことも知らせてもらえない関係なのだ。 「今でもつらいです」 彼女はふっと時計を見た。彼からもらった時計が今も彼女の腕にはまっている。 亀山早苗(かめやま・さなえ) 1960年東京生まれ。明治大学文学部卒。不倫、結婚、離婚、性をテーマに取材を続けるフリーライター。「All About恋愛・結婚」にて専門家として恋愛コラムを連載中。近著に『アラフォーの傷跡 女40歳の迷い道』(鹿砦社)『人はなぜ不倫をするのか』(SBクリエティブ)ほか、多数。 前のページ1234 最終更新:2018/03/28 21:00 Amazon アラフォーの傷跡 女40歳の迷い道 (鹿砦社新書) 妻目線の物語も聞きたいところね…… 関連記事 不倫20年で「妻バレ」して破局……出産・結婚もあきらめた女が苦悩する「私の存在意義」「産まないという選択肢はなかった」W不倫12年、“彼”との子どもを育てる女の決意「40歳を迎えてラクになった」19歳から10年不倫を繰り返した女の、結婚・出産願望「出産リミットが見えて焦りが」長期不倫8年目、結婚と出産願望で揺れる38歳の岐路「気づいたら12年たっていた」増加する“長期不倫”の背景と事情【長期不倫ルポ】 次の記事 関西Jr.に事務所が本腰? >