中学受験は母を狂わせる!? 「名簿にいない子が入学式にやって来る」騒動はなぜ起こるのか?
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
中学受験は“親子の受験”とも呼ばれているが、現実的には “母子の受験”という要素が強い。中学入試は難関校になればなるほど、驚くほどの高難度な問題が出題されるため、普通に公立小学校の授業を受けているだけでは、とても太刀打ちできないことが多い。それゆえ、中学受験を志望する小学生は新4年生になるタイミングで専門塾に通塾し、丸3年をかけて受験対策をしていくことが一般的な世界なのだ。当然、子どもは11歳前後であるから、まだまだ親(主に母)の手助けが必要になる。
その手助けとは以下のようなものに代表される。
塾の送り迎えや自宅学習の時間管理、塾に持って行くお弁当作り、模試の付き添い、大量のプリント管理、学校説明会への参加、成績の分析、人によっては我が子に勉強を教える……などなど。
やるべきことが多岐に渡るので、母の頭の中は“中学受験”で覆われがちだ。
誰かが“入学辞退”の電話を――
これだけでも大変なことなのだが、さらに母を悩ます“ヒエラルキー問題”が出てくる。中学入試には、塾がランキングした偏差値というものがあり、母たちは偏差値が高ければ高いほど、“難関大学合格実績が良い人気の中学”という意識に囚われやすく、簡単に洗脳される。つまり、偏差値が1ポイントでも高い学校が良いと思い込み、子どもの偏差値が1ポイントでも落ちると「もうダメだ!」と心配し、嘆き悲しむ人が続出するのである。
受験とは非情な世界だが、中学受験もご多分に漏れず、全員が同じように勉強しているため、思うように成績は伸びず、気を抜けば、すぐに落ちる。塾によっては、成績でクラスは元より席順までもが明確に決められる。そんな環境だけに、子どもよりも母の方が成績に一喜一憂してしまうのだ。
しかも入試には定員がある。極端な話、隣の子よりも1点でも高い得点を取らなければ“合格”という切符はもらえないのである。母たちは否応なく、このことを意識しながら、年端もいかない我が子を、時にはなだめ、時には励まし、時には叱り、時には褒めということを繰り返し、受験本番まで持っていくわけで、その苦労は、自分自身の受験とは比べ物にならないほど、楽ではないことが普通なのだ。