「産まないという選択肢はなかった」W不倫12年、“彼”との子どもを育てる女の決意
あの日から数えて、断続的ではあるが2人の関係は12年になった。リカさんの次女、ダイキさんとの子ももうじき中学生だ。
「ダイキは、うちの子をまんべんなくかわいがっていますが、次女を見る目はちょっと違うのかなあ。それは私の偏見かもしれませんが。彼とは次女のことはまったく話していません。どんなに聞いても私が決して明かさないことを、彼もわかっているんだと思う」
月に一度の頻度で、リカさんはダイキさんとゆっくりホテルで過ごす。ラブホテルではなく、ごく普通のホテルを使い、リカさんだけ泊まっていくこともあるという。
「まれにですけどね。私、もともとホテル好きなんですよ。それを知っている夫が、『ストレスたまったら、ホテル暮らししてきていいよ』と言ってくれて。1泊ですけど、ホテルに泊まるとリフレッシュできる。そのとき、ダイキに忍び込んできてもらうという感じですね。ダブルの部屋をとるからホテルに悪いことはしていませんよ」
食事はルームサービス、ほとんど外に出ずに2人だけの時間を楽しむ。そして次の週末、ダイキ一家がリカさん宅に遊びにくることも。
「不思議なんですよね。ダイキと2人でいると、今も恋愛感情がいっぱいなのに、ダイキが家族連れでうちに来ると、私はダイキを弟みたいに扱ってる。その切り替えが難しいと思ったことがないんです。自然に切り替えられている。2人で会うときのダイキと、うちに遊びに来るダイキは別だと、頭が認識しているのかもしれません」
オンナは生まれついての女優である。状況に応じて自分を変え、ごく自然に振る舞うことができるのだ。
「この先? どうなるんでしょうね。よく“不倫”って、背徳感があるから余計に燃えるというでしょう? 私にはそういう感覚があまりないんです。ダイキのことが好き。だから会ってる。でも私の本分は、会社員であり子どもたちの母であり、夫にとっての妻である。それだけなんですよね。『本当はダイキと一緒になるのが運命だった』みたいなストーリーも私の中にはないし、もっとシンプルに捉えていますね。妙な“物語”を作ると、自分の中で処理しきれなくなると思っているのかもしれない。そもそも、これを“恋”と名づけていいかどうかもわからない。既婚者がそんなこと言うのはおこがましいんじゃないかという思いがあります」
誰に対してもオープンで明るいリカさんだが、実は非常に冷静な目で自分を、周囲を、見つめているのだ。それでも「ダイキに会うことはやめられない。今は」と目力のこもった表情できっぱりと言った。
亀山早苗(かめやま・さなえ)
1960年東京生まれ。明治大学文学部卒。不倫、結婚、離婚、性をテーマに取材を続けるフリーライター。「All About恋愛・結婚」にて専門家として恋愛コラムを連載中。近著に『アラフォーの傷跡 女40歳の迷い道』(鹿砦社)『人はなぜ不倫をするのか』(SBクリエティブ)ほか、多数。