「産まないという選択肢はなかった」W不倫12年、“彼”との子どもを育てる女の決意
ダイキさんの全身全霊を込めた告白に、リカさんの心が揺れた。一度だけという約束で、2人は抱き合った。
「ダイキの情熱があまりにすごかったのと、その日はおそらく妊娠しづらいということもあったんです。でも帰り際、なんだか嫌な予感がしました」
ダイキさんの結婚式は無事終わったが、リカさんは結局、その1回で妊娠してしまった。夫ともたまにはしていたので、確実にダイキさんの子とは言い切れなかったものの、帰り際のあの体の感覚からすれば、「おそらくダイキの子」だと思ったそうだ。
「産まないという選択肢はなかった。ダイキの子であっても育てたい。そう思っていました。もちろんダイキに言うつもりはありませんでした」
リカさんに迷いはなかった。授かった命を無事に世の中に出したいと心から思った。
「3人目ができたと言ったら、夫は大喜び。ますますみんなの手を煩わせるかもしれないけどって、親やきょうだいたちに連絡していました」
産まれた瞬間、確信した
リカさんが妊娠したという話はダイキさんにも伝わった。ダイキさんは結婚後も、時々妻を伴ってリカさん宅に来ていたが、2人の関係が怪しまれるような言動は一切とらなかった。
「ただ、私が6カ月目に入ったくらいかな。遊びに来たダイキが、キッチンで料理をしていた私を手伝おうとそばに来て、『リカさん……あの』と言ったんです。私はあえて『ダイキのところも早く子どもができるといいね』と大きな声で言いました。ダイキは私を気遣うような目で見たけど、それきり何も言えなくなって。ひょっとしたら自分の子かもしれないと思っていたのかもしれませんね」
月満ち足りて、リカさんは出産。産まれてすぐ子どもの顔を見た瞬間、ダイキさんの子だと確信したという。
「女の子だったんですが、目鼻立ちがダイキに生き写しで。でも、周りはみんな『おとうさんにそっくり』って。夫もデレデレになっていました。そのとき初めて、私がしたことは正しかったのか、と疑問を抱きましたね」
ただ、不思議と夫への罪悪感はあまりなかった。
「夫個人への罪悪感ではなく、なんというのか、お天道様に申し訳ないというか」
そんな古臭い言い方をリカさんはした。もっと大きな「何か」、もし神がいるのなら「神様、ごめんなさい」というような感覚らしい。しかしリカさんの倫理観でいえば、あのとき堕胎していたら、罪の意識はもっと大きかっただろう。
「産むと決めたのは自分ですから、こうなったら、それこそ墓場までもっていくしかない。私の子として大事に育てようと覚悟しました」