「義母がくれたのは、3万1000円のガスレンジだけ」訛りの強い東北で、四面楚歌の結婚生活
――どこに住み始めたんですか?
彼の実家から車で30分ほど離れた、隣町のアパート。まずは看護の仕事を探そうとしました。だけど、こちらの訛りが予想以上に強いので、ひとまず断念。そんなとき、妊娠がわかりました。それで就職はいったん諦めて、無理くり籍を入れたんです。彼の両親から私の両親への挨拶もなし。長男の結婚なのに、結婚式はしてくれないし、新婚旅行も行かずじまい。なんにもない。義母がくれたのは、3万1000円のガスレンジだけ。
――親戚付き合いは、しなくてよかったんですか?
いえ。話はまったく違ってました。親戚付き合いの連続です。籍を入れてから1カ月後には、夫の妹の結婚式がありました。300人ほどが出席する盛大な式。私は留袖を着せられて、親戚の1人として手伝いをさせられました。だけど、その場で誰も私のことを知りません。だから会う人会う人、「○男(夫)の妻です」と挨拶して回りました。ご祝儀は10万円。夫が勝手に包んでいました。私ら、義妹から何ももらってないのにね。
――義理の妹さんとの待遇差はひどいですね。
しかも義妹は、たった4カ月で離婚して、実家に帰ってきたんです。あれだけ盛大な結婚式をやったのに。その後、義妹は実家の近くで1人暮らしを始めました。だけど実家には入り浸ってましたね。ご飯は自分で作らずに、親に作らせて持ってきてもらってたようです。両親や夫、そのほかの親戚たちに「働かなくていいよ」って言われて、みんなに守られた、甘えた生活を送ってるわけ。私は大いに不満でしたが、気がついたら彼女も妊娠してた。しかも私よりも先に、結婚した年のうちに産んじゃってました。
――一方で、山本さんのお子さんはどうなったんですか?
年明けには臨月。だけど、生まれる前が大変だった。何が大変かって? 冬の雪かきですよ。普通は父親がやるんだけど、夫は一切やらないんです。
――では、雪かきは誰が?
私がやるしかなかった。前年の春に妊娠がわかったとき、慣れない雪かきを、まさか臨月ですることになるとは思ってもみなかった。
――流産したら大変ですよ。
いえ。夫はそんなこと、まったく気にしない人なんです。2月にいよいよ出産ってときだって、立ち会うはずがない。産んだのは病院です。会陰切開で生みました。夫や夫の親戚のお見舞いは、結局なかった。