隠れ待機児童ママの悲痛な声――「就職先が見つからない」と保活断念、生活はカツカツの地獄
在宅ワークを中心としたライター業や、手持ちの一眼レフで撮影した画像のネット販売などを副業としている香織さん(仮名)。出産前までは飲食店のバイトを掛け持ちしてフリーターとして働いていた。現在は1歳半年になる息子の育児をしながら、エンタメ系の記事を書いている。
テレビウォッチ記事の場合、実際に番組を視聴し、終わったら記事を書く必要がある。原稿料はわずかなため夕飯の準備などが疎かになると、夫から「そんなこと辞めてスーパーのレジでも打ちに行け」と嫌味を言われているそうだ。子育てだけに専念できた時代と違い、価値観が多様化した現代では“専業主婦”は肩身が狭く感じるらしい。
「この前、向かいのアパートでガス漏れがあってサイレンが鳴っていたので通報したら、家に消防士が事情聴取に来て、職業を聞かれたんです。ライターとは言いづらく“主婦”と答えたら、“無職ですね”とはっきり言われて傷つきました」
ライターをしていることからもわかるように、彼女に働く意思はある。しかし、預け先を見つけてからの就活は不可能なため、再就職ができずにいるのだ。
「専業主婦って、自分からその状況を望んで、子どものことも好きで、四六時中一緒にいたいっていう人のことだと思うんです。私の場合は、元々は働くのが好きだけれど、飲食店の接客業しか経験がないために、なかなか働きに出られないんです」と続けた。
専業主婦でいられない理由に、経済問題もある。夫の収入だけで暮らしていくには余裕がないため、劣悪な条件の在宅ワークでも受けてしまう傾向があるのだ。
「今は妊娠中から保活をするのが当たり前になっているので、母親学級で出会ったママ友が、“今日は区役所の相談窓口に行ってきた”と語るのを聞くと、羨ましく感じました。やっぱり世間的には、私みたいな状態は無期限の無職ですから」
区役所の相談窓口に座ることだけでも、憚られるという「マミュート族」。彼女たちは、育児に無関心なパートナーを持ちワンオペ育児に陥っているケースも多い。平日の昼間に児童館や公園に向かうと、保育園にも預けられず行き場のないママたちが、スマホ片手に子どもを遊ばせている光景に出会う。子どもの笑顔の裏で、ママたちは働きたい意思をひた隠しているのかもしれない。
(文=池守りぜね)