「出産リミットが見えて焦りが」長期不倫8年目、結婚と出産願望で揺れる38歳の岐路
「結婚はまだ公にしていなかったので社内的には問題ありませんでした。でも会社にいれば、同じ部署ではないけど彼と顔を合わせることもある。会社も辞めたほうがいいのかなと考えていたんです。そんなとき声をかけてくれたのがK部長でした」
入社したときから、K氏はときおり彼女に声をかけてくれていた。そのK氏が直属の上司になったのはちょうどこの頃。
「どうした、元気ないなと食事に誘ってくれたんです。部長と2人で食事に行くのは初めてでした。ちょっとこじゃれた小料理屋さんの小上がりで、当時、小娘だった私はそんなところに行ったこともなかった。その日は、思い切って全部話しました。部長は『聞いておいてよかった。これからきみには思い切り仕事を頼むことにするよ。忙しくするのが一番だ』ってニッコリしてくれた。そうだ、仕事を頑張ろうと素直に思えました」
そして彼女はこのとき、決定的な経験をする。焼き魚をきれいに食べられない彼女のために、部長は身だけをとってくれたのだ。
「早く食べなさいと言った部長の顔に、ふっと父親的なものを感じたんです。当時私が28歳、部長は45歳。決して父親ほど年齢が離れているわけではないけど、ああ、お父さんってこういうものか、と。父とは8歳で別れていますが、父はそれほど子どもの面倒見がよくなかったんでしょう。遊んでもらった記憶はあるけど、一緒に食事をした覚えがあまりないんです」
魚を取ってもらったとき、ナツコさんはふと涙ぐみ、部長を驚かせた。だが部長は何も聞かなかったという。
それからナツコさんは必死に仕事に取り組んだ。半年足らずで部署内にできたチームリーダーとなり、とある商品を企画開発、それが商品化されてかなり売れた。
「部署で飲み会をしたんですが、帰りに部長が『きみは本当に頑張ってくれた。特別に一杯奢るよ』って笑いながら声をかけてくれて。部長が1人でしか行かないというバーに連れていってくれたんです。実はその日は私の誕生日。店に着いてからそのことを言うと、部長が手を回してくれたんでしょう、途中でケーキが運ばれてきました。店の常連さんたちも一緒に祝ってくれて。うれしくて泣きました。こんな素敵な誕生日は生まれて初めてだったから」