「出産リミットが見えて焦りが」長期不倫8年目、結婚と出産願望で揺れる38歳の岐路
大学を卒業後、ナツコさんは誰もが知る有名企業に就職した。職場で仲間もでき、ようやく独り立ちできたと実感した。
「弟も独立していましたから、実家は母だけになりました。ただ、母もお店を続けていたし、放っておいても1人で楽しく暮らしているようなので、今に至るまで、会うのは年に1回くらいかな」
仕事を始めて6年目、2年付き合っていた同期の男性と結婚を決めた。そろそろ結婚しようという消極的な理由だった。
「なんとなくね、生きていれば結婚するものだと思っていたし、ちょうどいい時期にちょうどいい人と付き合っていたという感じでした。私、大学時代に短い付き合いがあっただけで、恋愛経験がほとんどないんですよね。だから、同僚の言うがままに付き合って、『結婚しよう』と言われたから結婚するか、と。女として自分に自信がないから、これを逃したら結婚しようと言ってくれる人は出てこないんじゃないかと思っていたし」
ナツコさんは目鼻立ちのくっきりした美しい人だ。その彼女がそんなコンプレックスを抱えていたとは信じられない。
ただ、婚約後、彼女は「このまま結婚していいのか」と思うようになった。それは彼の実家を訪ねたときから、じわじわと感じていたことだ。彼の両親と姉夫婦が集まった実家で、彼女は居場所がない思いにかられたのだ。
「家族とか家庭とか、私にはよくわからないんです。父親と母親が笑いながら話している感じ、姉とお父さんが冗談を言い合う光景などが私には衝撃的すぎて……。私には“家庭”なんて作れないんじゃないかと怖くなり、彼に結婚をやめようと言ったんです」
彼は彼女の両親が離婚したことを、もちろん知っている。「オレたちはオレたちの家庭を作ればいいんだよ。うちの実家を参考にする必要もない」と彼女を励ました。それがまたナツコさんにはプレッシャーになった。
「ヘンな言い方ですが、私は親の離婚にもめげずに頑張っていい学校に入って、いい会社に就職した。自分でそう思っていたんですよね。だけどそこで親への恨みとか、自分の境遇への哀しさとか、そういうものが一気に噴出した。私自身、ずっと我慢して“いい子”として生きてきたことをようやく自覚したんです」
その結果、彼女はやはり彼と結婚することはできないと感じた。もう少し、「いい子ではない本当の自分」を検証する時期が必要だった。