「気づいたら12年たっていた」増加する“長期不倫”の背景と事情【長期不倫ルポ】
そういう意味では、既婚同士のダブル不倫なら、最初から「対等な関係」である。女性たちは「夫とはセックスしたくないけど、恋はしていたい」と感じている。そして、リーマンショックで実質収入が減って、経済的にも精神的にも余裕がなくなった男性たちは、同世代の女性たちと「心の交流」を図りたいと願った。そんなことからダブル不倫が増えてきた。
どちらも家庭があるのだから、互いの気持ちをわかりあえる。しかも、そう頻繁に会えるわけではないので、一緒にいる時間を最大限楽しく過ごそうとお互いが心がける。ごくまれに一緒に少し遠出をすると、それが貴重な思い出となる。いつしか8年や10年はたってしまうのだ。
「気づいたら12年がたっていました。10歳だった子どもが大学を卒業したとき、彼との年月にも思いを馳せていた。最初はこんな関係を続けて、バチが当たったらどうしようと思ったこともあったけど、『それぞれ、家庭は家庭で責任をもって頑張っていこう。でも、2人でいるときは愛情だけを育んでいきたい』と彼に言われて……。夫は生活していく上でのパートナーですが、彼は私個人の人生のパートナー。今はそう思っています」
そう話してくれた40代後半の女性の言葉が忘れられない。
この2年間、世間では有名人の不倫バッシングがすさまじかった。長期不倫をしている人たちの中には、そんな風潮を恐れる傾向もあった。それでも、彼女たちは自分を信じ、2人の関係を信じた。
「もちろん、いいことをしているなんて思ったことは一度もありません。いつも心のどこかで『この関係はいけない』と思い続けてきた。それでも別れられない、別れたくない。その思いの方が強かったから、10年以上、続いてしまったんでしょうね」
50歳になる別の女性はそう話してくれた。双方の子どもたちが成人したので、今は時折2人で1泊旅行もするようになった。
「ただ、2人とも離婚する気はありません。配偶者に罪はないし、どちらも家庭がうまくいっていないわけではないので。家庭は家庭、恋愛は恋愛だと私も思っています」
女性たちがそうやって、ある意味で「割り切る」ことができるようになったため、不倫は「一つの恋愛の形」として定着しつつあるのかもしれない。
不倫カップルが10組いれば20通りの思いがある。長期不倫の渦中にいる女性たちも、おそらく思いはそれぞれだろう。全て一括りにはできない。来週から、長期間、不倫をしている女性たちの声を連載していきたい。
亀山早苗(かめやま・さなえ)
1960年東京生まれ。明治大学文学部卒。不倫、結婚、離婚、性をテーマに取材を続けるフリーライター。「All About恋愛・結婚」にて専門家として恋愛コラムを連載中。近著に『アラフォーの傷跡 女40歳の迷い道』(鹿砦社)『人はなぜ不倫をするのか』(SBクリエティブ)ほか、多数。