コラム
【連載】別れた夫にわが子を会わせる?

「妊婦なのにOL時代の服を着ていた」三男を抱えながら、節約して夫の借金700万円を返済

2018/02/02 15:00

『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?

第13回 尾崎豊美さん(仮名・47歳)の話(前編)

「長女を妊娠してまもなく、夫に700万円の借金があることがわかりました。節約に節約を重ねて完済しても、ねぎらいの言葉はありません。それどころか、私を見下すようになりました」

 学校事務員で面会交流支援団体びじっと職員の尾崎豊美さんは高校生2人、中学生1人の子ども3人を1人で育ててきた。元夫に養育費や慰謝料は請求していない。なのに存分に会わせているという。どういうことなのか?

■レストランで一目惚れした男性と知り合って半年で結婚

――旦那さんになる男性とは、どうやって知り合ったんですか?

 東京で専門学校を卒業した後、OLとして働いていました。夫になる人は、友達と一緒に出かけたレストランの店員でした。福山雅治をきゃしゃにした感じの人かな。バツイチで、私よりも3歳上。事故で幼子を亡くしています。そのことで、前の奥さんと折り合いが悪くなって離婚したんだそうです。

――好きになったのは、どちらだったんですか?

 話をして、あっ、と思ったというか。ビビッときたというか。それは、お互いがそうだったようです。彼のお父さんはすでに亡く、お姉さんは体が不自由でした。そんなふうに肉親や子どもを失うつらさを知っている人だからこそ、結婚や家庭というものをわかってるはず。だから大丈夫。彼となら幸せになれる、って思ったんです。

――アプローチは、どちらからですか?

 夫が「豊美じゃないとだめだ。豊美がいなかったら俺は死ぬ」って、そんなことを言うんです。そこまで言ってくれる人だから、守ってくれるはず、って思っちゃった。知り合って半年で結婚しました。春に知り合って数カ月でお互いの実家に挨拶に行き、秋には同居を始めたんです。そのタイミングで婚姻届を提出して、年明けに式を挙げました。20年ぐらい前のことです。当時、私は20代後半という微妙な年齢でした。

――新婚生活は、どうでしたか?

 それなりに甘い生活だったんだと思います。新居は、彼の勤務先であるレストランにほど近い、都心の物件。同居してしばらくは、私も働いていました。給料の半分ずつをお互い出し合って、あと半分ずつは貯金をしようっていう約束で、その通りにやっていました。

――出産願望はあったんですか?

 もちろん。3人は欲しいと思っていたし、すぐにでも欲しかった。だけど、なかなかできなかったんです。妊娠がわかったのは、結婚して2年近くたってから。ちなみに仕事は、妊娠して1カ月ほどで辞めました。つわりがひどくて、仕事が続けられなくなったんです。

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