「Zipper」休刊、そして主婦の友社買収……動乱の2017年女性誌トピックスを徹底分析!
栗田 2017年の総まとめとしては、ファッション系統ごとにカテゴライズされた雑誌を成立させるのが、難しくなってきた時代だということがいえるでしょう。これからは、ファッション総合誌が売れていた、90年代半ばの頃に回帰していくのではないでしょうか。総合誌が良かった時代といえば、「non-no」が100万部発行されていた95〜96年あたり。それが90年代終わりになると、ギャル系やストリート系など雑誌が細分化され、総合誌である「non-no」の部数が落ちてきたという流れがありました。しかし今はまた、「non-no」や「MORE」のように、総合的な側面を持つ女性誌が生き残るだろうということがいえます。
――ファッションだけでなく、情報も充実した、保守層に好まれる内容の誌面づくりということですね。
栗田 これまでは、出版社という枠組みを超えて、赤文字系雑誌、青文字系雑誌とカテゴライズすることが可能でした。一時の「cancam」など赤文字系雑誌は、4つ子かなというくらい内容が似ていたりもしましたが、今後はそういうこともないでしょう。現在、宝島社が他社の女性誌と一線を画しているように、出版社ごとの個性が際立ってくる流れになるのではないでしょうか。雑誌の作り手である編集者のアイデアやスキル、人脈が効いてくるようになり、そういう意味では出版の本来の紙という在り方が生きる時代になるのでは。“編集部がすばらしいから雑誌が売れる”を体現しているのが新潮社でして、ローティーン誌の市場が活況だというわけではないのに、売れているというのはすごいことですからね。
――出版社と編集の底力が試される市場になる、ということですね。
栗田 赤文字系、青文字系、ストリート系、ギャル系といったファッション系統の多様化バブルが、90年後半から10年後半の、ほぼ20年続いていたわけですが、今年はその終焉といえるのでは。00年代初頭から06年くらいまでは、ファッション誌バブルで各社が参入し、ファッション誌の数が一番多く、一番雑誌を買う層である10代後半から25歳の若年層向けの雑誌が35誌ほどありました。しかし現在では10誌ほどがなくなり、25誌くらい。ファッション誌を作れば売れるだろうという時代は終わり、弱い雑誌は淘汰され、現在は“本物”が残っているといえます。しかし、今後はさらに淘汰される可能性があり、将来的にはおそらく10数誌になるでしょう。そこに入れるか試されるのが2018年だと思うんですね。やはりそういった時にファッション誌以外にヒットジャンルを持つ集英社、小学館、講談社、光文社といった大手老舗出版社の底力は強いわけでして。そういう意味で女性誌に特化していた主婦の友社の買収は、時代を象徴する出来事だったのかなと思います。
(取材・文/犬塚左恵)
栗田 宣義(くりた・のぶよし)
1958年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業、社会学者、甲南大学教授。専門分野はファッションとメイクの社会学、ポップカルチャーの社会学など。女性ファッション誌の研究歴は21年、『新社会学研究』(16年創刊、新曜社)の編集同人。近著に『マンガでわかる社会学』(オーム社)がある。