サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビュー2017年・女性誌トピックスを分析! カルチャー 2017女性ファッション誌動向を甲南大学・栗田教授に聞く 「Zipper」休刊、そして主婦の友社買収……動乱の2017年女性誌トピックスを徹底分析! 2017/12/29 17:00 カルチャーインタビュー女性誌 雑誌不況時代の現在、2017年も休刊や廃刊となった女性誌が続出した出版界。しかし、市場が狭まる中、売上が好調な女性誌も存在しているのもまた事実。そんな今年の動向の総まとめを、女性ファッション誌の研究歴21年、『新社会学研究』(16年創刊、新曜社)の編集同人である甲南大学・栗田宣義教授にうかがった。 「Zipper」祥伝社 女性誌版元の雄・主婦の友社買収が象徴すること ――今年、最も印象的だった女性誌に関する出来事を教えてください。 栗田宣義氏(以下、栗田) なんといってもTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が出版社の主婦の友社を買収すると発表したこと。これはファッション誌業界において、すごく大きな意味を持っていると思います。 というのも、主婦の友社は女性向け雑誌を多く手掛ける老舗出版社で、「Ray」(88年創刊)や「mina」(01年創刊)や「S Cawaii!」(00年創刊)、その他にも主婦の友社の支援を経て復刊された「小悪魔ageha」「姉ageha」などがあります。日本の女性向け雑誌版元の良心ともいえる存在だったんですね。 ――CCCの狙いはどういうところにあるのでしょうか。 栗田 CCCは動画配信サービスなどが流行している昨今、レンタル事業を中心に行うTSUTAYAの店舗が続々閉店に追い込まれるなど苦戦しています。しかし、新規展開の蔦屋書店に関しては、16年の販売額が約1308億円だったり、書籍を扱う店舗数が800軒を超えるなど書店としては急成長を遂げています。CCCは主婦の友社のほかにも、徳間書店や美術出版社を買収し、傘下に入れています。そういう意味で、CCCは今後の書店展開において、出版社買収によって足りない部分を充足させようという意欲的な行動なのでしょう。しかし、CCCも紙媒体での女性誌運営はまだまだ未知の領域でしょうから、そこが懸念する点ですよね。主婦の友社の編集権が今まで通りなのかも含め、持ち前の雑誌のカラーがきちんと今後出せるのかなど、動向を見守りたいと思います。 CCCは現在、ネットでの情報発信が中心です。主婦の友社の優秀な編集スタッフを、CCCのネットマガジンなどに投入して展開していくというのは予想できますが、果たしてそれが成功するのか。今まで休刊した雑誌の多くは「ネットに力を入れるから、紙媒体はお休み」というパターンが多いのですが、その後に成功しているかというと、必ずしもそうではありません。 ――主婦の友社も、買収されるくらい厳しい状況だったと? 栗田 今年上半期のABC販売部数公査(以下、ABC公査)で数字を見てみると、なかなか厳しいんですよね。「Ray」「mina」ともに4万6,000部。「S Cawaii!」にいたっては3万4,000部なんです。ほかの赤文字系の数字を見てみますと、「CanCam」(81年創刊、小学館)は10万部、「JJ」(75年創刊、光文社)が6万3,000部、「ViVi」(83年創刊、講談社)は8万8,000部。赤文字系で唯一5万部を割っていたのが「Ray」ということになりますね。また、「mina」が競合する「non-no」(71年創刊、集英社)は12万6,000部ですから、その3分の1くらいの実売しかなかったということになります。これを見ると、「Ray」「mina」ともにかなり他誌に水をあけられていたことがわかります。ファッション誌は5万部を割ると厳しいといわれている中、主婦の友社の雑誌はすべてそうでした。そうするとやはり、相当の整理が生じてくる可能性があります。今もっとも苦しいのは、雑誌刊行を主体とした版元なのは間違いないですね。 ――そんな中、好調な女性誌はあるのでしょうか。 栗田 やはり宝島社は強い。旗艦誌である「sweet」(99年創刊)が26万部。ボーイッシュファッションの先駆的存在「mini」(00年創刊)が14万部、「SPRiNG」(96年創刊)が12万部と圧倒的な部数を誇ります。「リンネル」(10年創刊)を含めた4誌がファッション誌ランキングのベスト4までを独占していますが、いずれも有名ブランドとコラボレーションした豪華付録付きの雑誌ばかりです。 しかし宝島社以外は弱いのかといえばそうでもなく、集英社はかつて20世紀には100万部を誇った「non-no」が13万部弱、「MORE」(77年創刊)が12万部、「Seventeen」(68年創刊)が14万部と好調で、“女性誌の集英社”のプライドにかけて部数を守っている印象です。ほかにも「MORE」のライバル誌である講談社の「with」(81年創刊)は10万部、「VERY」(95年創刊、光文社)は8万6,000部ですから、集英社や講談社、小学館に光文社といった大手老舗出版社はいずれも踏ん張っている印象です。なので残念ながら主婦の友社のひとり負けといった印象。他の老舗出版社はファッション誌以外に、漫画などの売れ線分野を持っています。主婦の友社は女性誌に特化した出版社でしたから、戦いに負けてしまった理由はそこにあるのかもしれません。 次のページ ローティーン誌は「系統が細分化されていない」のが強み 123次のページ Amazon Zipper(ジッパー) 2018年 02 月号 [雑誌] 関連記事 「Domani」の「アラフォー婚活」ルポ、後悔と失敗まみれ! 寂聴は「離婚推奨」のカオス「non・no」セックス企画はエロくない!? 女子大生の悩みに寄り添う“真っ当さ”「私たちはモテて当然」の恋愛強者ぶりを発揮する、「non・no」女子大生に募るモヤモヤ女子校出身者をディスりまくる、「non・no」恋愛あるある企画の意図とは?篠原ともえ、『堂本兄弟』のオフショット公開で「懐かしい!」「もっと見たかった」と反響