ドラマ評論家が選出、2017年イケメン俳優ベスト5! 主演より脇役を「発見する」時代に?
――『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ』(宝島社)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、2017年のドラマで存在感を示したイケメン俳優ベスト5をピックアップ。ジャニーズ勢は皆無、そして脇役からの選出が目立つ結果となった。
1位:高橋一生
2位:竹内涼真
3位:菅田将暉
4位:健太郎
5位:浅野忠信
ベスト5と銘打っているが、2017年に関して言えば高橋一生にはじまり高橋一生に終わったという、空前絶後の“高橋一生一人勝ち”の年だったと言える。
元々、高橋は子役時代から活躍しているキャリアの長い俳優で、2000年代から名脇役として高い評価を得ていたが、15年の『民王』(テレビ朝日系)でクールな政治秘書を演じたあたりから注目度が急上昇。昨年の時点で人気はかなり高まっていたが、今年は坂元裕二脚本の『カルテット』(TBS系)大河ドラマ『おんな城主 直虎』連続テレビ小説『わろてんか』(共にNHK)月9『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』(フジテレビ系)と立て続けに出演した。
全て主役ではなく、二番手三番手のおいしいところを持っていく役柄なのが功を奏しているのだろう。押し付けがましくない存在感のため、視聴者は「私が見つけた!」と思えるのも魅力の1つかと思う。
『カルテット』の役柄ではマスコットボーイ的な可愛さを振りまき、『直虎』では裏切り者のふりをしながら影から直虎を支える参謀役という複雑な人物像を見せ切った。しかし、その後に続いた2作に関しては、作り手の側が世間の人が求める「高橋一生」のイメージ……金持ちでクール、頭が良くて影からヒロインを支える参謀役、を安直に使っている感じが少しある。こういう役ばかりが続くと、俳優として一気に飽きられてしまうのではないか。もちろん、そういうことを織り込み済みで今は大きな流れに乗っかっているのだろうが。
気になるのは、今後、主演級の役をいつ演じるかだろう。今の高橋は、明らかに脇だからこそおいしいという立場だったので、その見極めは難しいところである。
イケメン俳優の新星・竹内涼真
圧倒的な高橋一生一人勝ちの中、唯一対抗馬と言えたのが竹内涼真だろう。
運も実力のうちというが、今年の彼は怖いくらいに役に恵まれていた。連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK)のヒロインと恋愛関係になるエリート大学生の島谷役で注目が集まり、『ひよっこ』から退場したタイミングで『過保護のカホコ』(日本テレビ系)に出演し、バイトに明け暮れながら画家を目指す苦学生を熱演。『ひよっこ』とは真逆の熱い役だったが見事演じきったことで役者としての幅を一気に広げた。そして池井戸潤原作ドラマ『陸王』(TBS系)ではストイックなマラソン選手を演じるという、立て続けにヒット作でおいしい役を演じることができた。
年齢的にも本来の意味でのイケメン俳優の新星は竹内なのだろう。グラビアでは、あざといくらいにかわいい笑顔を見せており、本人も自分が王子様的存在として見られていることに、かなり自覚的なのではないかと思う。
役者として急成長した菅田将暉
菅田将暉に関しては、すでに若手俳優のトップとして「殿堂入り」みたいなところもあるので、ここで取り上げるのは今更という感じもするのだが、幅広い演技ができる役者に急成長していると、あらためて思う。
00年代の窪塚洋介のような、奇をてらったカリスマキャラとしての演技ばかりが注目されがちだが、一方で映画『銀魂』の志村新八のような、凡庸な人間をしっかり演じられる幅こそが彼の最大の強みだろう。三浦春馬、高橋一生、柳楽優弥が出演する究極のイケメン大河ドラマとなった『直虎』で最後尾を飾ったのは、菅田演じる井伊直政の物語だったが、直政の「才能はあるのだが若さゆえに視野が狭くて愚かで自分勝手、でも負けず嫌いで頑張っている。そこがかわいい」という稀有なキャラクターは、今の菅田にしか演じられない泥臭くも華やかな男だった。