上海ディズニーランドとTDRは違いすぎる!? テーマパーク研究者が驚愕した「5つの意外な点」
2017年6月にオープンした上海ディズニーランド。中国本土初のディズニーランドというだけに、「東京より空いている」「東京より安価で遊べる」「施設の造りが雑なのでは」などのイメージもあるが、実際に日本から訪れると驚く点がいくつもあった。
筆者は経営学の研究者でテーマパークの経営戦略が専門。2004年から東京ディズニーリゾートのキャスト(アルバイト)の人材育成とモティベーション向上策を研究し始め、その後、ディズニーランドやユニバーサル・スタジオを中心に世界のテーマパーク経営を研究している。
世界で12番目にできたディズニーのテーマパークである上海ディズニーランドは、世界のディズニーランド、特に東京ディズニーリゾート(TDR)と比べてどうなのか――さまざまな情報がネット上に飛び交っている中、真実はいかがなものか? 見てきたことをここにお伝えする。
【その1】なぜかセキュリティが厳しすぎる
上海ディズニーランドに入園するためには2カ所の大行列を突破しなければいけない。筆者が訪れたのは平日(営業時間は9時から午後9時まで)で、特に混雑する日ではなかったのだが、9時10分に到着したところ、その長蛇の列に愕然とした。
第一の関門は手荷物検査で、警備員がバッグの中身を確認しないとゲートには入れない。次の行列は入口のチケット販売なのだが、東京と違い、上海ではこの第二関門で、中国人は国民ナンバー、外国人はパスポートを見せ、事前にネットで申請しておいたナンバーと一致しなければ販売してもらえず、入園できないのだ。東京では入園の関門は1つだけなのに、上海では2つあり、両方とも時間のかかる方法をとっているため、筆者は入園までに1時間10分かかり、入園したとき10時20分であった。勘弁してほしい。上海の治安は良いので、ここまでする必要はない。
しかし、そんな厳重なセキュリティにもかかわらず、パーク内外に「行商」「物売り」「ダフ屋」が何人かいて驚いた。ディズニーランドに入り込み、警備員の目を盗んでミニーマウスの耳のカチューシャや何かのチケット(ファストパス等の優待券や前売券か)を販売していて、ある意味「さすが中国」といった風景であった。
【その2】実は東京ディズニーランド並みに混んでいる
香港ディズニーランドが空いていて快適に乗れることで有名なため、上海ディズニーも同じように空いているのかと思って行くとガッカリする。筆者は事前予想の5分の1くらいしかアトラクションに乗れなかった。
アメリカの調査会社TEAとAECOMの調査によると、上海ディズニーランドの2016年の入場者数は560万人。6月オープンなので半年で560万人なら年間1100万人くらいだろう。同年、東京ディズニーランド(TDL)が年間1654万人、東京ディズニーシー(TDS)が1346万人なので、上海ディズニーランドは、東京の約7割のゲスト(客)。でも、アトラクションの待ち時間は東京の約8割と、ゲスト数に比べて“長い”と感じるのだ。
その理由は、まず「東京よりアトラクションが断然少ない」から。ディズニーランドは、故ウォルト・ディズニーの方針により、最初は小さく作り、用地を広げていってアトラクションを追加し、大きく成長させていく。最初に資金難に陥り、結果的に小さく作るしかないため、新しいディズニーランドほどアトラクション数が少なく、人が集中してしまうのだ。
次に、「パレードよりも乗り物に乗りたい人が多い」というのもその理由だ。おそらく上海のゲストの大半が1~2回目の来園であるのに対して、東京のゲストは1回目の人もいるが、5回以上、10回以上、20回以上、50回以上の人がざらにいて、乗り物よりもパレードやショーに時間を費やす人も多い。つまり上海のゲストは東京のゲストより乗り物を重視しているのだろう。そのため10月の平日で、人気アトラクションは60~120分、それ以外は15~40分待ちであった。