「保活しんどすぎる」ルポ――区役所の窓口で号泣、ママ友との友情終了の仁義なき争い
恵さんは、アートやデザイン系の書籍を扱う出版社の正社員。昨年6月に男児を出産し、今年4月から職場復帰予定だったが、育児休暇を延長し来年度の4月入所を目指している。中学時代から、生徒会で書記を務め、地元でも有数の進学校である女子高に進学。上智大学に進学し、在学中はカナダの大学へ語学留学をするなど、「思い通りの人生」だったと言う。
そんな彼女が言う「保活」とは、念入りに計算されたものだった。仕事で知り合ったデザイナーの男性と32歳で結婚し、高齢出産と定義されている35歳までに出産するのを目標に、妊活に励んだ。もちろん、「保活」に有利とされる4月から6月生まれを狙うために、妊活は逆算して8月から10月を中心に子作りをした。保活は、妊娠中から始まっている。
一般的には、生後57日以上たっていないと保育所には入園できないというルールがある。募集枠が多い4月入所に応募するには、早生まれだといろいろと不利になるのだ。ある保育園では、毎月行う誕生日会が「12月生まれ」までしかいないという。これも過熱化した「保活」の結果かもしれない。
「出産も狙い通り6月生まれで、妊娠中から認可に落ちた時のための認証や、認証外の保育所の見学も始めていて、準備は十分だったと思います。保活のために、夏以降はママ友と会うスケジュールも入れないようにして、役所に通ったりしていたのに」と、悔しそうな表情を浮かべる恵さん。
あくまでウワサレベルだが「保育園に入れないと仕事ができなくて困る」ということを書いた「嘆願書」を申込書に添えた。申込書にある希望園の記入スペースの数が足りないので、紙を足して通えそうな範囲の保育所は全て書いて出した。しかし、結果は「不承諾」。
「うちは夫が在宅勤務なので、点数が引かれるんです。でも納得できません」
来年度の点数に有利になるように、未認可保育所に11月から預け始めたという彼女。時短勤務のため、収入の半額近くが保育料で消えていく。
「どうせだったら、きちんとしたところがいいって思って。ネイティブの先生がいるインターナショナルスクールに預けています。でもこのままだと破産しそうなので、来年こそは認可に入りたいです」
実際に、インターナショナルスクールに預けてみると、周りは仕事をしている間の「保育」を目的としたママではなく、子どもの教育を第一と考え預けている人が多くて話が合わない。
「ママ友とのLINEのグループチャットが1日に20件ほど来るんですよ。こっちは、そんな暇ではないのに。外遊び用の上着も、わざわざノース・フェイスとか高い物を着せていたり。プチセレブママが多くて、疲れます」
このように、プライドから、認可外には預けず「プリスクール」と呼ばれる英語教育に力を入れた保育所に預けるママもいる。保活だけではない闇がそこには見え隠れした。