「高学歴女子は患者数65倍」「ダイエットとは別物」専門医師が語る、摂食障害の原因
――摂食障害は1980年代から増えたと聞いたことがあるのですが、何が原因なのでしょうか?
鈴木 これは、1980年代に病院で診察を受ける患者さんが増えたという意味です。それまでも摂食障害自体はありましたが、認知度が低く、病院に行っても「きちんと食べましょう」としか言われてこなかったんです。しかし、1983年にカーペンターズのカレンが摂食障害で亡くなったことや、解説書などが出版されて、世間に摂食障害が知られるようになりました。
――摂食障害は、薬などで治療するのですか?
鈴木 心の傷が原因なので、薬では治りません。医師が患者さんの話を聞いてあげて、一緒に原因を探っていって、本人も病気を正しく理解し、納得することが第一歩です。そして、私の場合は「あなたはダイエットのつもりだけど、実は違うんですよ」という話をして、1人ひとりそれぞれ、その人の抱える問題点や悩みを解決していきます。
――摂食障害の予防や対策は、あるのでしょうか?
鈴木 ただただ受験勉強するだけでは、さまざまな人生のハードルを乗り越える抵抗力を身につける機会が不足します。やはり親は、育て方を考えねばなりません。いろいろな形で人とたくさん交流をして「自分」というものを築き上げるためには、小さい頃はきょうだいで、もう少し成長したら小学校でというように人との付き合い方を学び、年齢とともにプロセスを踏んで大人にならないといけません。今は一人っ子が多いから、それも抵抗力を下げる原因のひとつですね。現代は、大人への準備がうまくいっていない時代なのだと思います。
(姫野ケイ)
鈴木裕也(すずき・ゆたか)
一般社団法人日本摂食障害協会副理事長。慶應義塾大学卒、同大学院修了(内科学)。元埼玉社会保険病院院長・名誉院長。著書に『拒食、過食のながいトンネルをぬけて』(女子栄養大学出版部)。