カルチャー
[サイジョの本棚]

レシピ本やグルメ本には書かれない「食べること」3冊――食を支える“生活感”の魅力

2017/11/05 19:00

『世界のおばあちゃん料理』(河出書房新社/著: ガブリエーレ・ガリンベルティ)

 「どんな料理を作り、食べるか」は、確実にその人の一面を象徴する。『野食のススメ』と同じく、そんなことを感じさせてくれる『世界のおばあちゃん料理』は、世界50カ国・58の家庭料理が掲載されたレシピ集だが、目次にずらりと並んでいるのは、各国の女性の名前。この本で紹介されているのは、著者が世界中を旅している中で訪れた“普通の家庭のおばあちゃん”の得意料理だ。各レシピには、食材や料理と共に、58人のおばあちゃんが、普段使っている台所やリビングで、写真を撮られている。

 77歳、夫を亡くし1人で暮らすノルウェーのシノーヴェさんは、キョツパ(牛肉と野菜のスープ)を作りながら、趣味のピアノや絵画について語る。62歳、丘の上にある家に住んでいるモロッコのエイジャさんは、家族が畑で働く様子を見下ろしながら、庭におこした火で鶏肉のタジンを作る――。得意料理や今好きなことについて語る彼女たちのインタビューや写真を通して、単なるレシピ以上に各国の風土や家庭の日常がありありと描かれている。

 おばあちゃんたちは、それぞれふっくらした二の腕や、ムラのある日焼けした肌を思い思いの装いで飾り、自室で笑顔を見せる。その背後に見えるキッチンもさまざまで、変色したまな板、端の焦げたミトンや洗い物が雑然と重ねられたキッチンも多い。そんな、一般的なレシピ本ではそっと除かれがちな生活感が、かえって写真の趣を深めているのは、インタビュアーであり、カメラマンでもある著者の温かい視線が感じられるからだろう。

 掲載された料理は高級料理ばかりではないし、オシャレでもないかもしれないが、1レシピ4ページの中に詰められた、各国それぞれの生活感を堂々とまとった女性と食卓の写真は、カラフルで、活力に満ちている。

 世界には、好きな服を好きなように着て、得意料理を得意げに振る舞うおばあちゃんがたくさんいる。それは、日本だと「ばあさん」「ババア」なんていうふうに呼ばれたりもするが、いつか、願わくば自分もそういうババアになりたい……と、大げさながら生きる希望が湧いてくる本である。
(保田夏子)

最終更新:2017/11/05 19:00
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