[女性誌速攻レビュー]「GINGER」10月号

“ルブタン特集”で読者をマウンティング!? 「GINGER」の突然変異に募る不安

2017/09/18 21:00

深い深いルブタン沼

 日比谷の交差点ですれ違ったクリスチャン ルブタンの「8.5cmヒール(いい女のアイコン)」を履いた女性に「圧倒的な敗北感」を感じ、「上質な艶を湛えた極上の女」になるために「これからはせめて週1回、パンプスを履こう」と決めた……そんなファッションエディター・古泉洋子のショートエッセイから始まるこの企画。ナビゲーターは、ルブタンの靴を60足持っているという山田優です。それにしても60足って、安く見積もって1足10万円だとしても、600万円は超える計算。「極論、履かなくたっていい!」「見ているだけで、特別な気持ちにさせてくれる」と鼻息語る様子からも、ルブタン沼の闇深さを感じます。

 これまで、現実路線で、いまいち読者の気持ちが上がらなそうなファッション特集ばかり組んでいた「GINGER」が、突然華やかな世界からのマウンティングを読者に仕掛けてきたのには驚きました。ルブタン氏とプライベートディナーをする仲だという山田を、一般人が真似ることはできないので心配ないとは思いますが、真面目な「GINGER」女子が、うっかりそのマウンティングに対抗してルブタンを買ってしまい、自意識にがんじがらめにされないか、気が気でなりません。

■「GINGER」流ダイエットはストイック

 続いて「アラサー女子のヘルシーアップな毎日。」という特集の中にある「モデルたちの“きれいの秘密”はヘルシーな習慣にあり!」を見ていきましょう。以前からちょいちょいダイエット特集はありましたが、そのたびに紹介されるのは、筋トレや食事制限などストイックな方法。真面目かつ努力家な「GINGER」女子と相性がいいのでしょう。今回も「小さな努力の積み重ねが、大きな美につながるのです(はぁと)」というキャッチの通り、「毎朝コップに半分甘酒を飲む」「自宅リビングでストレッチボール」「夜は炭水化物を一切摂らない」「自分でお灸や円皮鍼をする」「アミノ酸をサプリで摂取」など、モデルたちがストイックな努力の裏側を披露しくれます。

 特に印象的だったのは、ゴルフにハマッて10年の三枝こころが、日焼け対策のためにフェイスカバー、レッグウォーマー、スパッツという「誰だかわからないくらいの完全ガード」姿でゴルフをしている写真です。先ほどのルブタン特集の山田も突き抜けていましたが、「GINGER」が読者に提示する価値観って、ちょっと極端すぎます。前号でも理想の結婚をテーマに、「ぺこ&りゅうちぇる」にインタビューしていたし、そもそも全編インタビューという雑誌の構成自体がやりすぎでしたよね……。


■結局、「GINGER」女子は困ったさんなのか?

 最後にチェックするのは「“職場の困ったさん”注意報、発令中!」です。「デキると思って全部ひとりで抱え込む」「“男に負けたくない!”というプライド」「自分で作った“自分ルール”を押し付けてくる」などが、同僚や先輩の困ったエピソードとして挙げられ、“困ったさん”にならないようにと注意喚起をしています。“困ったさん”になってしまう原因は「一生懸命ゆえに、逆にそのやる気が空回り」しているせいだと心理カウンセラー・塚越友子さんは分析。「自分にも他人にも、要求する水準が高い完璧主義な人は要注意」「頑張りすぎそうになったら、あえてブレーキをかけてほしい」とアドバイスしています。

 散々ストイックな努力を称賛しときながら、最後は「GINGER」読者を“困ったさん”予備軍として扱うなんて、衝撃的な展開! 「GINGER」女子たちが「自分の軸」を持てる日はやって来るのでしょうか。
(橘まり子)

最終更新:2017/09/18 21:00
GINGER(ジンジャー) 2017年 10 月号 [雑誌]
“いい女”というものに囚われすぎると地獄