『ケイゾク』から『警視庁いきもの係』へ、渡部篤郎に覚える「どうしてこうなった?」感
『警視庁いきもの係』(フジテレビ系)が最終回を迎えた。本作が放送されていたフジテレビ系日曜午後9時枠のドラマは、『警視庁いきもの係』を最後に終了する。同じ時間帯に放送されているTBS系「日曜劇場」との差別化を図り、母親と子どもが楽しめるようなファミリー向けドラマを模索していたが、なかなか定着せずに低視聴率が続いていたのが原因だろう。
この『警視庁いきもの係』も、動物にまつわる事件を捜査する刑事ドラマという、緩い作りのドラマだ。そのため、あまり期待せずに敗戦処理を見守るような気持ちで何となく見ていたが、緩い作りだからこそ、主演の渡部篤郎と橋本環奈の魅力を引き出すことに成功していた。また、ちょっと毒のある笑いを入れてくる点も面白かった。
例えば第7話で、でんでん演じる警察OBが「熱帯魚に詳しいよ」と口にする。映画『冷たい熱帯魚』で、でんでんが熱帯魚のショップを経営する凶悪殺人鬼を演じていたことを思えば、ブラックなギャグである。また、第9話で突然、「アッサークラ」という旅館の従業員が出てきた時は思わず笑ってしまった。アサクラとは、渡部の出世作となった刑事ドラマ『ケイゾク』(TBS系)に登場する猟奇殺人犯の名前で、本作に『ケイゾク』が接続されたような奇妙な味わいを感じた。ご丁寧に渡部が「アサクラ」と言う瞬間に『ケイゾク』の劇伴に似た音楽まで流していた。
もちろん、これらは本編と関係ないが、こういう軽いノリのドラマで『冷たい熱帯魚』や『ケイゾク』をネタにするセンスは悪くない。もしもこのチームが違う場所でドラマを作ったら、また見たいと思うくらいの爪痕は残したと言えよう。
それにしても『ケイゾク』の頃の渡部を知っていると、こんなに緩いドラマに出ていること自体が驚きである。「アサクラ」と連呼する渡部を見ながら、「どうしてこうなった?」と、考え込んでしまった。
『ケイゾク』の功罪
90年代の渡部には圧倒的なカリスマ性があった。俳優としては伊丹十三の映画『静かな生活』で高い評価を得ていたが、世の中が渡部を認知したのは、バラエティ番組に出演する人気モデル・RIKACOの年下の旦那としてだった。テレビドラマでは、1997年に放送された高岡早紀主演のドラマ『ストーカー逃げきれぬ愛』(日本テレビ系)で注目され、ストーカー役の演技が不気味で気持ち悪かったことから、ヤバい俳優が出ていると話題になった。