「手錠をはめたまま」分娩、生まれてすぐ離れ離れ――厳しいムショの出産事情
覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
■刑務所での出産は自己負担ナシ
シャブで逮捕(パク)られる人、相変わらず多いですねー。って、私もその1人だったわけですが(苦笑)。
報道で知った作家のC・W・ニコルさんのお嬢さんの例は、今年の2月にパクられた時、シャブが陽性の上、妊娠されていたとのことで、心配ですね。お母さんの勝手で子どもが傷つくのは、一番ダメですよ……。もう出産されたようですが、いい子に育ってほしいです。
というわけで、今回はムショでの出産についてです。大前提として、刑が確定していない時(拘置所)は自費ですが、確定したら(刑務所)税金から出るので自己負担はナシ。出産のタイミングによって、負担に大きな違いが出ますね。
妊娠3カ月くらいでパクられると、拘置所で中絶するのはお金がかかるので、おろすにおろせず、ムショで出産というのが多いです。そんな時は、たいてい男とも別れてますから、好きでもない男の子どもを産んで、すぐ手放すことになります。
■1歳半まで獄中育児OKはタテマエ
法務省の統計だと、毎年20人以上の子どもが獄中で生まれているそうです。私もムショでおなかの大きいコは何人も見ましたよ。お風呂とかでも「うわっ、おなか大きなったねえ」「もうすぐやねー」などと、みんなでそれなりになごんだ会話をしてました。食事もみんなよりごはんが多めで、牛乳などの乳製品がついてましたね。
一応、法律では1歳半までムショで育てられるそうですが、そんな人はいてません。所内の保育室には保母さんもいてないし、昼間は刑務作業で工場に行きますから、その間、赤ちゃんは放置されて、せいぜいおむつを替えてもらう程度。もちろんお友達もいてません。せやから、生まれてすぐに親族が引き取るか、設備の整った乳児院へ入れるかのどちらかになります。産んで1週間くらいは一緒にいて、あとは離れ離れがほとんどですね。おっぱいが張るたびに赤ちゃんのことを思い出すんやろうなーと思うと、切ないですね。