[ドラマで気になるアノ男]

竹内涼真『過保護のカホコ』、“朝ドラ・シンデレラボーイ”が俳優としてブレークした理由

2017/08/21 21:00

『過保護のカホコ』の幸運

 竹内涼真が演じるのはピカソを超える芸術家になるために絵を描いている大学生・麦野初。同じ大学生でも慶應義塾大学のエリートだった島谷とは違う、バイトに明け暮れる苦学生だ。一見、軽薄に見えるが、熱い気持ちを持っていて、いつもカホコを心配している優しい青年である。その一方で、母親に捨てられた過去を抱えているという複雑な内面を見せていて、カホコと一緒に成長していく姿に視聴者の共感が集まっている。

 もともと、遊川和彦は初期の代表作であるコメディドラマ『オヨビでない奴!』(TBS系)の頃から、(遊川自身の分身ともいえる)軽薄だが、実は優しくていい男の描写を得意としていた。近年の作品ではあまり出番がなかったが、今作の麦野は久々に登場した遊川が得意とする男性ヒーローだ。ポータルサイト「citrus」に掲載された遊川との対談の中で、竹内は、いつも怒っている麦野の気持ちがわからなくて苦労したと、語っている。そして、役を演じる際には、自分の中で「オレ、どうしちゃったのかな?」くらいやった方が伝わると気づいたという。

 確かに、麦野を演じる竹内の芝居は『ひよっこ』の島谷と比べるとケレン味が強い。元来、遊川作品のキャラクターは、本作で高畑充希が演じるカホコのように、味付けが濃くて芝居が過剰なのだが、優等生的な竹内の場合、これくらい過剰な方が、ドラマ映えするのだろう。

 朝ドラでブレークした俳優にとって、次の出演作品が成功するかどうかは、俳優生命の大きな分かれ道だが、『ひよっこ』でブレークしてすぐに、『過保護のカホコ』というヒット作に巡り合えたことは、竹内にとってはもちろんのこと、同作の制作チームにとっても幸運だったと言えよう。

 育ちの良さと軽薄さの振り幅が強みに

 竹内涼真は現在24歳。俳優として大きく注目されたのは『仮面ライダードライブ』(テレビ朝日系)だ。2000年にオダギリジョーが主演を務めた『仮面ライダークウガ』以降、平成ライダーシリーズは、佐藤健や瀬戸康史、近年では菅田将暉や福士蒼汰といった若手イケメン俳優を輩出しており“男版の朝ドラ”と言っても過言ではないドラマ枠である。1年に渡って、演技経験がほとんどない新人が主役を担当し、放送されることになる。そのため出演する前と後では別人のように成長を果たし、竹内もそうやって演技力を磨いてきた1人だ。


 『仮面ライダードライブ』の後も、『時をかける少女』(日本テレビ系)や『THE LAST COP/ラストコップ』(同)といったドラマに出演し、着々とキャリアを積み重ね、ここにきて一気にブレークしたと言える。

 竹内の魅力は、育ちの良さが醸し出す真面目さと清涼感だ。だからこそ『ひよっこ』の島谷があれだけハマったのだろう。しかし、それだけでは優等生的すぎて、魑魅魍魎が跋扈する芸能界では、埋もれてしまう。そんな中で麦野という、軽薄で乱暴に見えるが実は優しい男という真逆の存在を演じたことで、役者としての振り幅の広さを証明した。この両極を演じた後なら、どんな役を演じても大丈夫だろう。これからの活躍が楽しみである。
(成馬零一)

最終更新:2017/08/21 21:00
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