「bis」編集長インタビュー

「笑顔はいらない」「bis」編集長・中郡暖菜が語る「媚びない女性ファッション誌」の作り方

2017/07/22 19:00

女の子の「なりたい」ものは「アイドル」「ハーフ」「ギャル」

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編集長の中郡氏

――「LARME」の特徴としては乃木坂46ら、アイドルの起用も大きかった。女性誌のゲスト的にグラビアというわけでもなく、アイドルから雑誌専属モデルに転向するでもないやり方が、当時は新鮮だったと思います。

中郡 5年前に当時の女の子の「なりたい」と思う人物像を考えた時に、「アイドル」と「ハーフ」と「ギャル」だと思って。その3つの要素を全部入れようと決めたんです。元「Popteen」(角川春樹事務所)モデルの菅野結以ちゃんみたいなギャルの子もいれば、今は「ViVi」(講談社)専属ですがハーフの瑛茉ジャスミンちゃんもいて、乃木坂46の白石麻衣ちゃんもいる。アイドルも含めて全部同じバランスにしたかったんです。

――「ギャル」と「アイドル」は一見相反する要素ですが、誌面は統一感がある。雑誌に登場する女の子に共通点はありますか?

中郡 やっぱり「媚びない」ということでしょうか。

――アイドルの中でも、女子ウケする子を選んでいるように思えます。女の子を選ぶにあたって基準はありますか?


中郡 うーん、どういうふうに見分けているんだろう……? 自分では結構無意識なんですけど。リサーチもしないですし、自分の感覚で「かわいい」というそれだけですね。実は私、アイドルにまったく詳しくなかったんですよ。だから「LARME」創刊の時も、アイドル雑誌についているアイドル一覧表を初めて見て、「“かわいい”」からお願いしたいですと事務所にお伝えしたのが、乃木坂46の白石麻衣ちゃんと元NMB48の渡辺美優紀ちゃんで、お二人にレギュラーモデルになっていただけて。当初は彼女たちがどのくらい人気があるのかも知らずに「かわいい」というただそのインスピレーションだけだったんです。

――「LARME」の創刊号は渡辺麻友(AKB48)さんと白石麻衣さんの表紙ですが、固定ファン、いわゆるオタ層が買うという当て込みも考えてましたか?

中郡 全然考えてなかったです。その頃ちょうど乃木坂がデビューしてすぐのタイミングだったんですが、麻衣ちゃんはまだそんなに前面に出ていたわけではなかったんですよ。とはいえ、その頃から神がかったヴィジュアルだったので、絶対! と思っていました。

 渡辺麻友さんにもご出演していただけたので、かわいらしい雰囲気は残しつつもアイドルの要素が強くなりすぎないように、全体的にどこかギャルっぽさと、ハーフっぽさの要素も入ったものにしたいとは思っていました。いろんな女の子が出ていることを強調する表紙にしたかったので。事務所の方に「(表紙のモデル写真が)小さいですね」と言われたので、そういう点でも珍しかったのかなと思います(笑)。

――雑誌の表紙って、売り上げのために場合によっては読者層やコンセプトとズレたタレントを起用せざるを得ないケースも少なからずあります。コンセプトがズレても売るためには仕方ない、みたいなことも……?


中郡 それはないですね。そこは譲らないです。

――「bis」プレ創刊号の表紙は女優の志田未来さんです。こちらはどういう理由での起用だったのでしょう。

中郡 「bis」のコンセプトとして表紙にも入れてある文言「Lady with the girl’s heart」は、少女の心を持ちながらも大人の女性になっていくという意味で、以前は少女と大人の間で「大人になりたくない」と揺れている感じだったのですが、「bis」は「もう大人だけど、少女の心は忘れていない」という大きな違いがあるんです。その中で志田未来さんがイメージにピッタリで、とてもかわいくて少女的なイメージがあるけれど24歳の大人の女性というところが素敵だなと思って。意外性も考えましたね。ほかと同じようなことをやっても意味がないので。

――「LARME」や「bis」に共通する特徴として笑顔が少ないですよね。

中郡 笑顔は特に好きじゃないんです。今、とあるオーディションの審査員をさせていただいているのですが、応募者5,000人中の2,000人くらいが「チャームポイントは笑顔」って言うんです。笑顔にそんなに力ないよ! と私は思っています(笑)。倍率が高すぎるので、オーディションに出る予定のある方は「笑顔」ってPRするのはやめた方がいいのではないかと!

――確かに、笑顔じゃない表情も魅力的ですよね。中郡さんの中にある美意識を体現できるモデルさんが大事というわけですね。

bis(ビス) (光文社女性ブックス VOL. 163)