コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

東野幸治の「手料理する人は優しい」発言に抱く、料理と“人格”を結びつけることへの違和感

2017/07/06 21:00

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の芸能人>
「(疲れていても料理を手作りしてくれるのは)優しい」東野幸治
『ワイドナショー』(フジテレビ系、7月2日)

 料理の腕と“人格”は絡められて語られがちである。

 例えば、「歌舞伎が好き」という人がいたとする。話の聞き手が、同じく歌舞伎が好きであれば、好きな役者のことで盛り上がるだろうし、興味がない人であれば、歌舞伎の魅力を聞いたり、もしくは「そうなんだ」で話は終わる。しかし、そうはいかないのが、料理である。

 「料理が好き」というと、どんな料理が得意なのかを聞かれることもあるが、若い女性であれば、「女子力が高い」とか「婚活対策」というふうに、変な方向に話がズレていくことは多々ある。また、褒め言葉を相手から引き出そうとするために「料理が好き」と言う人もいるだろう。

 考えてみると、料理と“人格”を絡めるのは、ある意味、“日本の風土”なのかもしれない。1976年に大ベストセラーを記録した、桐島洋子の『聡明な女は料理がうまい』(主婦と生活社)や、2000年に発売された名横綱・貴乃花光司の妻、花田景子の『ピンチも料理で救われます』(世界文化社)といったふうに、料理下手は“暗愚である”“人生が開けない”というような“ダメ女”のレッテルを張る空気が日本にはある。夫である木村拓哉が芸能人として最大のピンチを迎えているのに、工藤静香がインスタグラムに手料理をアップし続けるのも、日常のひとコマを披露するというより、「自分は女性として格が高い」ことのアピールなのかもしれない。

 料理の話は、どうも論点がずれる。そう思わされたのは、7月2日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)。女性向け掲示板「発言小町」に投稿されたトピックについて取り上げていた。結婚6年目の妻が残業帰り、夫に「今日何食べたい?」と聞いたところ、「もう遅いから簡単なものでいいよ、食べて帰ってもいいし」という返事が来る。「簡単なもの、何がいいかなぁ」と妻が再び質問すると、「とんかつがいい」と夫が言う。油の処理や掃除を考えると、揚げ物は簡単な料理ではない。妻は「簡単ちゃうわ」とツッコみ、「揚げ物が簡単なものだと思われていたことがショックな夜でした」と結んでいる。

 佐々木恭子アナは「ふざけるなですよね」と発言し、国際政治学者・三浦瑠璃は「日本の食事は基準が高い。アメリカではパンとハムだけということがある」と日本の食事に手がかかりすぎなことを示唆しつつ、「(私なら疲れていても)作ってあげるけど」と結んでいた。MCの東野幸治は、そんな三浦を「優しい」と言い、一方の佐々木アナは「『ふざけるな』と言った私が、本当に格好悪いですよね」と笑いに落とした。「とんかつが簡単なものと思われていたことがショック」という話題なのに、「夜遅くにとんかつを揚げてくれる人は、優しい」に話がすり替わっていたのである。

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