「死ぬくらいなら会社辞める」のは簡単じゃないーー過労死マンガの作者が訴えたかったこと
――今、政府は「働き方改革」として、月の残業時間の上限を100時間未満とする方針で動き始めています。この「働き方改革」について汐街さんはどう捉えていますか?
汐街 過労死ラインが80時間となっているのに上限が100時間なのは、非常に疑問が残ります。ただ、この80時間にも定義に条件がついており、上限100時間のほうは毎月OKというわけではないので、総合的に考えれば同じくらいなのかもしれません。「36(サブロク)協定」(時間外労働に関する労使協定。労働基準法36条に基づき、会社は法定労働時間を超える時間外労働を命じる場合、労組などと書面による協定を結び、労働基準監督署へ届け出る必要がある)の締結・届出がない場合、無制限に残業させられていたという話も聞いたことがあるので、そこから考えると小さな一歩なのかなとは思います。
ただ、「100時間まで残業OKなんだ」という捉え方をしてしまう企業は、おそらく非常に多く出てくるとは思います。労働力も少なくなってきていますし、若い方の意識もすごく高くなってきているので、働く方が「NO」を出していけるようになれば、変えざるを得ないのかなと。この本は、働く方の人にも変わってほしいという内容になっています。
――汐街さんが今後描きたいテーマはありますか?
汐街 本当は少女漫画を描きたいのですが、需要がないので(笑)。今後はもう少し労務の方向から働き方に関して描きたいです。漫画内にもあるYさんの例は、2週間前に辞める旨を伝えているのに会社側が辞めさせてくれず、最終的には労務に詳しいお父様が会社に電話した結果、辞められました。本来、法律上では2週間前までに申告すれば辞められるはずです。そういう労務的な知識を、働く側も持っていかなきゃいけないと思います。
(姫野ケイ)
汐街コナ(しおまち・こな)
広告制作会社のグラフィックデザイナーを経て漫画・イラストの活動を開始。装丁画・挿絵・ゲームキャラクターイラスト等を手がけている。