カルチャー
『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』著者・汐街コナさんインタビュー

「死ぬくらいなら会社辞める」のは簡単じゃないーー過労死マンガの作者が訴えたかったこと

2017/05/05 15:00

『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』より

――家庭のストレスであれ、いじめの問題であれ、追いつめられたときの心情は過労と同じなのですね。汐街さんが過労自殺をしそうになったときに勤めていたデザイン会社は、新卒で入った会社ですか?

汐街 そうです。

――では、周りが残業ばかりしていると、残業をすることが当たり前と思っていた部分はありますか?

汐街 そうですね。特にデザインの業界は「残業があって当たり前、それをわかって入ってきますよね?」という暗黙の了解がありました。よく、「●●さんが倒れた!」「えーっ! この仕事どうするの?」ということが起こりがちで、倒れた人よりも仕事の心配になってしまうという。当時、全く知らない事務所のデザイナーさんが亡くなったこともあったのですが、そこの社長は「死ぬと思っていなかった」と言ったそうなんです。そして、私も含めて同じ業界の人たちは「なんでそれぐらいで死ぬのにデザイナーになったの?」という考えの人が多くて……。どちらかというと死んだ人を責めていましたね。

 実は私、デザイン会社の面接時に「20時に帰れますか?」と聞いたんですよ。それで面接に落ちたら、それでいいやと思って。そのときは「20時に帰れます」と言われたのですが、実際に入ってみると20時どころか24時でないと帰れない。本気で「私は何があっても20時に帰ります!」って言えば帰れたんでしょうけど、それができる人はなかなかいないと思います。

――空気が読めない、と思われてしまいますよね。

汐街 私はかなり空気が読めない方だったので、言いたいことは結構言っちゃっていました(笑)。でも、長時間労働による寝不足でツラいというのがありましたね。それにパワハラやセクハラが入ると、もっとツラかったと思います。ネット上では「パワハラやセクハラさえなければ100時間くらいの残業は平気なはず」という意見も見かけますが、過労死ラインが80時間となっているのは、それなりの根拠があってのことだと思うので、ちょっとおかしいなと思います。

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