「死ぬくらいなら会社辞める」のは簡単じゃないーー過労死マンガの作者が訴えたかったこと
2015年12月25日に電通の女性社員が過労自殺したと、昨年大きく報道された。電通は労働基準法違反容疑で書類送検され、社長が辞任。この事件は世の多くの人に衝撃を与えたが、一方で政府は「働き方改革」を掲げながら、月の残業時間の上限を過労死ラインの80時間を上回る100時間未満にする方針で動いている。
働き方に関して注目が集まっている今、自身の長時間労働の経験を綴った漫画がツイッターにて30万リツイートされたイラストレーターの汐街コナさん。その後、精神科医のゆうきゆうさんを監修に迎えてまとめた『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』(あさ出版)を上梓。汐街さんに、この漫画を描いた理由、過労死・過労自殺に至る心情について話を伺った。
■長時間労働による自殺未遂エピソードはよくあること
――今回の書籍化は、ご自身の長時間労働時のエピソード漫画をツイッターにアップし、反響があったことがきっかけだそうですが、その動機を教えてください。
汐街コナさん(以下、汐街) 私のアカウントをフォローしてくれているのは若い人たちが多いんです。過酷な環境でも我慢して働いている方もいたので、私が長時間労働のストレスにより電車に飛び込みそうになった経験を、「みなさんも注意してください」と伝えられたらと思ってアップしました。
また、やはり電通の事件もきっかけですね。あの事件が起こったとき、多くの方が「死ぬくらいなら会社を辞めればいい」と言っていて、それは同意なんですけど、それができない状態に陥ってしまうんです。それを前もって知っていないと、陥ったときにはもう遅いということを含めて知っていただければと思いました。
――寄せられた反響のなかでも特に印象的だった感想やご意見は何ですか?
汐街 特に「これが」というものはないのですが、「あるある!」みたいな感じで、たくさん私と同じような経験をしたエピソードが寄せられ、若い人やデザインの業界だけでなく社会全体でとてもよくあることなんだなと思いました。私はこの漫画で、うっかり電車に飛び込みかけたことを描いていますが、同じように電車に飛び込みそうになった方や、クルマ通勤の方だと「ぶつかればいい」と思っていた方とかもいて……。
長時間労働以外でも、家庭でのストレスによって視野が狭くなり、暗く出口が見えない状態になっている女性や、いじめられているという中学生からも「共感しました」と感想が寄せられました。そして、学校関係者から「いじめられて自殺しちゃう子の気持ちを伝えるために、参考の資料として配布させてください」という連絡もありましたね。