證大寺・井上城治住職インタビュー

「墓じまい」がはやる時代の供養の形ーーLGBTや内縁関係でも入れるお墓が生まれたワケ

2017/04/25 15:00

仏教ではLGBTへの批判や否定は全くない

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間柄を問わないお墓「&<安堵=あんど>」

――関係性を問わないお墓「&<安堵=あんど>」は、LGBTのカップルでも入れる点が時代に合っているように思いました。全職員でLGBTに関する勉強会や座談会を行ったとのことですが、それまで住職は、LGBTに関してよくご存じなかったのですか?

井上 いやぁ、知らなかったですね。知らなかったというか、新宿二丁目にひっそりと集まっている人たちという印象で「友達にはなりたくないな」という偏見を持っていたほどです。でも、その人たちがお墓を求めているという理由で勉強したのではありません。ある雑誌に「性的少数者は自殺率が一般的な人と比べて4倍も高い」と書いてあり、その理由が「自分の自己肯定感が弱い」「アイデンティティーがない」「自分の評価の拠り所である親からも認められない場合がある」というものでした。そうなると、自分で肯定感も持てないですよね。

――同性愛を禁じている宗教もありますが、仏教だと、どういった考え方になるんですか?

井上 仏教では、LGBTへの批判や否定は全くありません。大乗仏教では老いも若きも、男も女も、あの世では関係ありません。救いの対象に入っています。でも、それを今までお寺側が伝えられていなかったのだと思います。伝えられていないというか、差別しまくっていたんだなと……。それで、證大寺のパートさんを含めた全職員で勉強会を行って、当事者の人を招いて座談会も行いました。

 結果、LGBTの人って少数じゃないなと思いました。“性”も大事ですが、それ以上に人として“いいやつ”かどうか、“好き”かどうかで普段から付き合っているのですから、LGBTに特化というのも、おかしいのではないかと思います。


――LGBTは、仏教の教えには反しないのですね。関係性を問わないお墓「&<安堵=あんど>」は、戸籍上の婚姻関係に当たらない人も対象としていますが、愛人のような関係は、仏教ではどのように考えられているんですか?

井上 一応、仏教には倫理の教えという面はあります。愛人の場合、キリスト教的には別れなくてはいけませんが、別れられない場合、自暴自棄になってしまう恐れもある。ところが仏教の場合、「別れられないのなら、別れられないと認めて大事にしなさい」となります。そうすると、「子どもを大事にするのだから、認知してね」とか「お金をちゃんとちょうだいね」となります。相手ときちんと向き合い、何をやっているかわかっているのか、という認識を徹底するのが大切なんです。

 

宮本常一 日本の葬儀と墓―最期の人生行事