「墓じまい」がはやる時代の供養の形ーーLGBTや内縁関係でも入れるお墓が生まれたワケ
――「関係性を問わないお墓」への取り組みを始めたきっかけはあるのでしょうか?
井上 いま申し上げた永代供養墓をご提供した際、たくさんの方からお申し込みがあったのですが、そのなかで「永代供養でもいいのだけれど、せっかく連れ添った夫婦なのだから一緒に入りたい」とおっしゃった方がいたんです。でも、同じタイミングでご遺骨になることは、なかなかありません。「亡くなった順番に埋葬します」と言ったのですが、「それでは離れ離れになってしまうので、どちらかが亡くなったらお寺で遺骨を預かっていただき、もう一人が亡くなってから、一緒に永代供養墓に入れてほしい」と言われまして……。
これに僕らは大反対だったんです。死んだら一緒というより、生きているうちに決めようよと。お骨で結婚するわけではないのだから、夫婦で入るためにどっちかが一度待つというのはおかしいのではないか。
――でも、そのように考えるカップルもいるんですね。
井上 100年くらい前の日本では、大名じゃない限り、お寺にお墓などなく、一般の人は村の共同体の墓に埋葬されていて、ある意味、永代供養墓だったんです。お参りするための五輪の塔などがあり、そこでお参り、もしくは本堂でお参りして、死んだらみんな平等に浄土だったわけです。でも、今の日本は、お骨信仰が強い。僕らとしては、永代供養墓の利用者が「夫婦だから自分たちは、ほかの人の骨とは分けてくれ」というのには抵抗がありました。
そのうち、ご家族ではない方が永代供養墓の申し込みにくるケースもあり、ひょっとしたら籍を入れていない内縁の夫婦や、長く一緒に暮らしているパートナーという可能性もあると気がついて、永代供養墓とは別に「間柄を問わないお墓」を思い立ったんです。それを「&<安堵=あんど>」と名付けました。籍を入れていない愛人関係だったとしても、故人への思いがあるので、よほどのことがなければお参りはします。思いと戸籍は、あんまり関係ないじゃないですか。そういった人がお参りできないのは、制度がズレているなと思います。それならば、昔の人が村の共同墓地でお参りしていたように、元に戻せばいいんです。