コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

はあちゅうの“セクハラおじさん告発”に見る、「結局は自分にしか興味がない」人物像

2017/04/20 21:00

 はあちゅう発言の真意を前者と仮定すると、「仕事の打ち合わせ場所としてバーを指定してくる男性はイヤだけど、男性によってはアリ」となるわけで、「セクハラに怒っている」という話なのではなく「嫌いな人と飲みたくない」という“自分話”にすり替わってしまっている。セクハラが根絶しない理由の1つは、「Aさんがやるとセクハラに感じるが、BさんがやるのはOK」というように、セクハラの基準が受け手の判断に任されているからだが、はあちゅうは自分がそれに加担していることに気付いていない。「無自覚な人は根が深い」というはあちゅうの発言は、彼女自身にあてはまっているのである。

 はあちゅうは、視野が広いとも言えない。彼女は、「突然仕事の電話をしてくる人たち」に怒りを感じるそうで、連絡手段はほか(メールやLINE)にもあるのに、電話をかけてこられると、「何この人、私の時間を邪魔してきている」と思うらしい。電話が個人の時間を奪うということに納得できる人は多いだろうが、相手の立場に立てば「それだけ急いでいる」「確かな返事がほしかった」とは考えられないだろうか。坂上は、そんなはあちゅうを「自分が主導権を握りたがる」と分析し、彼女はその意味をまるで理解していないようだったが、坂上には彼女が、「私の望むように、私を扱って」と訴える“お姫さま”に見えたのではないだろうか。

 既存の価値観に風穴を開け、多くの信奉者を集めているように見える人物でも、話をよく聞いてみると、自分にしか興味がない。ネットの特徴は、すなわち、はあちゅうの特性でもある。女子大生時代からカリスマブロガーとして活躍してきた、つまり仕事に困ったことがないことも、はあちゅうの視野の狭さを後押ししていると言えるだろう。

 「炎上」は、はあちゅうの代名詞だが、ネットというものは、誰かの反応がなければ成り立たないことを考えると、炎上は“才能”である。はあちゅうが火をつけ、その火を消すまいとネット民が薪をくべ、私のような者が、そこからこまごまと字を連ねる……そんな食物連鎖的なつながりができあがっているのだ。はあちゅうがネットからいなくなる日は、ネットがなくなる日。私は本気でそう信じている。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2017/04/21 16:15
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