「SNSで自分を装うことは、安心感にも中毒にもなる」世界を騙した“天才作家”が嘘をついた理由
――作家としての今後について教えてください。
ローラ 作家としては、回想録を書いています。それが一番新しい作品になりますね。それにしても、今回来日できて本当によかったです。以前、映画『サラ、いつわりの祈り』のプロモーションで来たときは、J.T.リロイとしてサバンナがインタビューを受けていたので、私は、作品について深く掘り下げて語ることはできなかったのです。今回チャンスをいただけて、とてもシュールな気持ちだけど感動しています。映画『作家、本当のJ.T.リロイ』を見た方たちから、たくさんの“ありがとう”や“勇気をもらいました”などのメッセージをいただいて、うれしいです。
書くことは痛みを伴いますが、解放感もあり、自分の書いたものが誰かの役に立ったり、助けてあげられたりするかも……と思うことがあります。映画『作家、本当のJ.T.リロイ』についても、マドンナなどのセレブが出てきますが、そこにばかり注目するのはもったいないことです。この映画が映し出しているのは“真実をどう語るか”です。
例えば、もしもあなたの周りに肥満の子がいたら、笑うのではなく、何が原因か、何かに苦しんでいるのではないかと気にかけて、真実をつかんであげてほしいのです。苦しんでいる人にもはい上がる道具や希望があり、女性同士助け合い、サポートすることもできます。苦しみを乗り越える方法はゼロではありません。誰かに「NO」と言われても信じないで、きっと何かあるはずですから。
(斎藤香)
ローラ・アルバート
アメリカ、ニューヨーク市ブルックリン生まれ。2000年、本名を隠してJ.T.リロイ名義で執筆した『サラ、神に背いた少年』がベストセラーになり、時代の寵児となる。06年、J.T.リロイはローラ・アルバートであると暴露される。現在は本名で、ヴォーグ、ニューヨークタイムズなどの媒体に寄稿しつつ、回想録を執筆中。なお、J.T.リロイを演じ続けたサバンナ・クヌープは告白本を出版。これを原作にした映画も予定されている。
『作家、本当のJ.T.リロイ』
2007年4月8日より、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国ロードショー