伊東秀記先生インタビュー

皮膚科医が“顔ダニ恐怖症”に警鐘! 「駆除石けんはやりすぎ」「敏感肌は存在しない」

2017/03/18 17:30
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誰の顔にもいる「顔ダニ」

 昨年末、読者モデルのりゅうちぇるが、「顔のニキビが治らないのは“顔ダニ”が原因だった」と告白して話題となった。イメージも相まってか、「顔ダニがいる=汚い」「顔ダニがいるとニキビが増える」などと認知されており、最近では、顔ダニを疑って皮膚科を来院する患者や、殺傷する洗顔フォームなども発売されているという。その一方で、作家の辻仁成は、顔を洗わずに顔ダニをキープすることで、美肌を保つ「顔ダニ美容法」を実践していると報じられたことも。一体、顔ダニとは何ものなのか。肌にいいのか悪いのか。立川皮膚科クリニックの伊東秀記先生に、顔ダニについて話をうかがった。

■ニキビが治らない原因は顔ダニだけではない

――まず最初に、「顔ダニ」とは何ですか?

伊東秀記先生(以下、伊東) 毛穴や皮脂腺に住んでいる毛包虫です。顔全体で400万匹ほどいるといわれており、肌のpHを保つなどの役割を果たしている可能性が高いと考えられています。ただ、どのくらい増えすぎると肌に害があるのかなど、詳細はわかっていません。というのも、顔ダニは細菌や真菌(カビ)などと共存している常在菌に似たようなものなので、取りたてて調査するような種ではないんです。そのため、顔ダニを専門に調べる医師もおりませんし、顔ダニに特化して実験などをしたデータやエビデンスもありません。

――では、なぜ今こんなにも顔ダニが話題になっているのでしょうか?


伊東 実は、火付け役は私なんですよね(笑)。そもそもテレビ番組で、いろいろ治療しても治らないニキビについてお話をさせていただいたとき、「もし抗生物質の薬剤耐性ができていたら、抗生剤の種類を変えただけでは治らない。また、その他の原因として、顔ダニが関与している可能性も考えないといい治療ができない」と話題に挙げただけなんです。それなのに、顔ダニだけがクローズアップされ、間違った情報が広まってしまい、“顔ダニ恐怖症”のような方も出てきて、困惑しています。

――りゅうちぇるは、「治らないニキビは顔ダニが原因」と診断されたそうです。

伊東 顔ダニがいるからといって病気なのではなく、なにかの原因で増えてしまったときに病原性を発揮するだけです。一部のニキビに顔ダニが関与していて、駆除することで治りが早くなるという事例もありますが、全ての治らないニキビの原因が顔ダニということは、ちょっと考えられません。りゅうちぇるさんのケースもクエスチョンが残りますね。

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