カルチャー
映画『毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル』関口祐加監督インタビュー

認知症介護の終末に「幸せな死=ハッピーエンディング」はあるのか?

2017/02/01 15:00

■「安楽死」が認められているスイスでは自分で死ぬ時期を選べる

関口監督(右)とお母さんのひろこさん (C)2017 NY GALS FILMS

――スイスに行かれたのは、どのような目的だったのでしょうか?

関口 今回「ハッピーエンディングな死」をテーマにするにあたり、スイスの医師にどうしても会ってお話が聞きたくて、初めてスイスまで行きました。今回撮影させていただいた医師のお父さんは脳梗塞を3度起こして絶望し、不自由になった身体で何度も自殺未遂を試みたそうです。そんなときにスイスの法律で安楽死ができるようになり、お父さんたっての希望で安楽死という選択をされ、家族みんなに感謝しながら安らかに逝かれたそうです。

 重い病気の患者さんが、苦しい治療をやめて緩和ケアだけの尊厳死を決めても、医療や薬の事情で、必ずしも緩和ケアに効果があるとは限らないということです。これは、西洋では盛んに議論されていることなんですね。ですから病気の状態によっては患者さんを心身ともに追い込むこともある。そんなときに死に方や、死ぬ時期を自分自身で決めてもいいのではないかということです。つまり、安楽死の発想は必ず緩和ケアの延長線上にあるということです。また、安楽死できる条件も厳しく決められています。当然ですよね。

――今回ついに最終章ですが、監督は『毎アル』の1と2を経て、思うことはありますか?

関口 いまだに各地で上映会が開かれ、講演もさせていただいて、もう見に来てくださるだけでもうれしいです。映画を見てくださった後に「目からウロコです」と言われると、よりうれしかったですし、私自身の最新作への励みにもなります。何回も言っていますが、介護している人たちはひとりで介護を背負わないで、オープンにして、つらいときは助けを求めてほしい。できないことを恥じたり悪いことだと思ったりしない心が大事です。それと、やはり私自身、介護者であるということでしょうか。介護の話を見て聞いてきたのではなく、実体験を落とし込んで映画化しているので、映画そのものがみなさんと同じ目線になっているのだと思います。ぜひこれからも『毎アル』シリーズを見続けていただきたいですね。
(斎藤香)

関口祐加(せきぐち・ゆか)
映画監督。1989年『戦場の女たち』で監督デビュー。認知症の母を被写体にしたドキュメンタリー映画『毎日がアルツハイマー』(2012年) 『毎日がアルツハイマー 2 関口監督、イギリスヘ行く編』(2014年)を監督し、現在は3作目『毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル』を製作中(2018年公開予定)。

■『毎アル ザ・ファイナル』クラウドファンディングがスタート
『毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル』のクラウドファンディングが2月1日よりスタート。「現在、編集・仕上げの大詰めを迎えています。特に今回は、海外での公開・配給も視野に入れ、オーストラリア人の編集者に入ってもらうこととなりました。完成にはまだまだ費用が必要なので、ご支援をどうぞよろしくお願いします」(関口監督)
※クラウドファンディングの詳細はこちら

■『毎日がアルツハイマー』『毎日がアルツハイマー2関口監督、イギリスへ行く』の再上映決定!
『毎アル ファイナル』特別映像の上映と関口監督によるトークイベントも開催。
公開スケジュール:東京・ポレポレ東中野2/4(土)~10(金)の1週間限定、大阪・シアターセブン2/25(土)〜3/3(金)の1週間限定
・『毎アル』シリーズ公式サイト 

最終更新:2017/02/02 00:15
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