荒川和久×角田陽一郎「独身大国ニッポンの歩き方」イベントレポート

2035年、日本の人口の半分は独身者に! 「超ソロ社会」でどう生き抜く?

2017/02/02 15:00

■独身は幸せを考えない方がいい?

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「既婚者の幸せとかソロの幸せとか、分けていることがナンセンス」と言う角田さん

 話題は「結婚できないと、一人前じゃない」という社会の圧力に、独身者たちが潜在的に苦しめられていることについても及んだ。荒川さんによると、その要因は、欧州諸国に比べて日本は結婚規範が根強いことをあげる。強い結婚規範は「結婚できない自分は何かが足りないのだ」という自己否定感と、その人が社会的役割を果たしている、という何かの承認感への欲求を生む。

 さらに、ソロ男もソロ女(詳しくはこちら)も、自己有能感は高い割に、自己肯定感がそれほど高くない。特に、「頑張った割に評価されていない」という承認不足や「まだまだこんなものでは満足しない」という達成不足という欠乏意識の強さがみられ、それゆえ、素直に幸福度を感じ取れないことにつながってしまっているという。

 トークの最後では、観客から「ソロ男はどうやって生きれば、幸せになるか?」という質問が飛び出し、荒川さんからは「独身は無理に幸せを考えなくてもいいのでは(笑)」という、意表をつく答えが返ってきた。

「赤ちゃんの寝顔を見ただけで、疲れがふっ飛ぶという既婚者の幸福感は、家族を持たないソロ生活者はわかりようがない。子どもがどれだけ力を与えてくれるかさえも想像できない。でも、だからこそ、そういう感じられないものを想像したって、しょうがない。特に、ソロ男は、消費で幸福を感じようとする傾向があります。ドーパミン消費といって、アイドルやメイド喫茶にお金をつぎ込んでしまったりする。でも、それを続けるとかえって幸せを感じにくくなります。無理に幸せになろうとして自分を追い込まない方がいい」


 一方、角田さんは、次のように話す。

「既婚者の幸せとかソロの幸せとか、分けていることがナンセンスだと思いますよ。僕は、幸せは欲の処理方法だと思っていて、若い頃は男の場合、性欲を処理することがすべてだったりするんだけど、自分の体が萎えてくると、性欲よりも、睡眠欲、食欲とかが大事になるし、最後には知的好奇心が圧倒的に感情を豊かにしてくれるんじゃないかなと思ってる。この知的好奇心をどう刺激して、満足させて生きていくか」

 幸せの形は人それぞれ。結婚するかどうかも人それぞれ。“既存の家族”という概念が、絶対的ではないものになろうとする未来、ソロ社会を生き抜くため、老若男女、個人と個人が助け合う必要がある。現代は、そうしたそれぞれが精神的に自立し、まったく新しい概念のコミュニティの形が生まれる助走期間なのかもしれないと感じるイベントとなった。
(上浦未来)

荒川和久(あらかわ・かずひさ)
博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダー。早稲田大学法学部卒業。独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・WEBメディア多数出演。著書に『結婚しない男たち 増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)。東洋経済オンラインにて『ソロモンの時代』連載中。

角田陽一郎(かくた・よういちろう)
1970年千葉県生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビに入社。TVプロデューサー、ディレクターとして『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』『EXILE魂』『オトナの!』など、主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社goomoを設立(取締役)。2016年末TBS退社。著書に『成功の神はネガティブな狩人に降臨する―バラエティ的企画術』(朝日新聞出版)『最速で身につく世界史』(アスコム)など。『水道橋博士のメルマ旬報』『cakes』で連載中。


最終更新:2017/02/02 15:00
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