カルチャー
[女性誌速攻レビュー]婦人公論1/24号

最強の“自分語り”降臨! 「婦人公論」小保方晴子氏の新連載に見る、完璧な自己プロデュース

2017/01/15 16:00

■平成の和泉式部誕生か

 さて、今号のビッグニュースといえばこちらかもしれません。昨年「婦人公論」で瀬戸内寂聴と対談し、世間の話題をかっさらった小保方晴子さん。その対談中「第二の瀬戸内寂聴に」なんて話も飛び出していた小保方さんですが、なんと、満を持して「婦人公論」で連載を持つことになったようです。その名も「小保方晴子日記」。サブタイトルは「『あの日』からの記録」。「彼女は理研を退職した2014年12月から、身の回りに起きた出来事と心情を日記に書き留めていました」とのことで、今回ここに日記の連載が実現!

 初回特別版は「近況報告を兼ね、連載を始めるまでの経緯が綴られた2週間の記録」が公開されています。淡々とつづられる日常の中に、潜んでいますよ、小保方節。おもわしくない体調や不安定な精神状態、自分を支えてくれる人々への思い、アメリカ時代の思い出……それらを季節が移り変わる様子や、作った料理(かなり凝っている)の話から喚起させるという、かなり高度なテクを駆使しております。例えば11月24日の日記は、こんな一文で始まるのです。

「いつもより日の出が遅いような気がして窓の外を見ると雪が降っていた」。雪を見ながら朝風呂に入り、「玄米の栗ごはんとフルーツを入れた豆乳ヨーグルト」を食べ、なかなか送ることのできなかった「『婦人公論』に最初の原稿を送った」。「降り続く雪がすごく綺麗に見えた。こんなに劇的に、しかも綺麗に景色を変えてしまうなんて雪は凄い。魔法のようである。雪の降る中、外に出て雪だるまを作った。久しぶりに触った雪は記憶にあるより柔らかくて温かかった」。

 徐々に変わっていく心境を「雪」になぞらえる小保方さん。入試の国語で使われそうな良作です。「作者は『雪』にどんな思いを込めていますか?」とか、ありそう。編集の手もいくらか入っているのでしょうが、「日記」という内なるものを語るメディアでも、自分の見せ方を完璧に心得た、過剰ともいえるセルフプロデュースをさく裂させていました。

 何度もレビューでは書いている気がしますが、「婦人公論」で大事なのは「善悪」ではないのです。自分をいかに語れるか。たとえ世間的に「悪」の烙印を押されたとしても、「世間で悪の烙印を押されてしまった自分」をストーリーとして語ることができれば、「婦人公論」では勝ちなんです。小保方さんの自分語りは、“私はゼッタイに悪くない”が真骨頂の「婦人公論」読者のヒロイニズムをどう刺激してくるのか。今後の展開が楽しみでなりません。
(西澤千央)

最終更新:2017/01/15 16:00
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