サイゾーウーマンカルチャーインタビュー猫トラブルの原因は人同士のいさかい? カルチャー ペットと人のこれからを考える 猫トラブルの原因は「近隣住民同士のいさかい」――地域猫活動が浮き彫りにする、意外な問題点 2017/01/15 19:00 インタビュー これまで、日本のペット事情について取材を行ってきた、短期連載「ペットと人のこれからを考える」。初回は、架空のペットブームにより犬猫の値段が高騰していること、そして第2回は、そんな状態に疑問を持ち、ペットショップでありながら生体販売をやめたChouChouの店長、澤木崇氏にお話をうかがった。 今、各所で「殺処分ゼロ」を目指す試みがある。しかし澤木氏の言うように「ペットショップより前の段階で、命を落とす子犬や子猫がたくさんいる」ことを考えると、動物愛護センターに持ち込まれるのは、流れの中の“末端”。もっと先端の“蛇口”にあたる部分を取り締まらなければ、到底「殺処分ゼロ」にはならないのだ。 その取り組みで最も有名なのが「TNR活動」だ。TNRとは、「Trap Neuter Return(トラップ・ニューター・リターン)」の略。飼い主のいない猫を捕獲して不妊手術を行い、元の場所に戻すことを指す。そうして手術を受けた猫は、人が目で見てわかるように、耳の先を軽くV字にカットされ、その形状が桜の花びらに似ていることから、「さくらねこプロジェクト」とも呼ばれている。 大阪に、飼い主のいない猫の不妊手術専門の病院「のらねこさんの手術室」がある。この病院では、避妊手術をメス8,000円、オス4,000円、入院費800円、送迎料金2,000~3,000円という安価な料金でサービスを行っているという。今回は、その代表・秋本真奈氏と副代表の安田和美氏に、病院でのTNR活動やこれからの課題をうかがった。 動物看護士の安田和美さん ■「猫を増やしすぎない」TNR活動とは? ――まず、野良猫の不妊手術が必要な理由を教えてください。 安田和美氏(以下、安田) ねずみ算は有名ですが、実は“猫算表”というのがあるんです。猫は1回のお産につき平均6匹産みますが、昔は母猫の栄養状態が悪いため、そのうち2~3匹残ればいい方でした。今は栄養状態がいいので、みんな大きくなります。年に4回産む子もいますから、1匹の猫が子猫を産み、その子猫がまた子猫を産みとなると、1匹の猫から年間50~70匹くらいに増える計算なんです。昔より今の方がスピードは速いと思います。 ――猫が増えると、なにか問題なのでしょうか。 安田 だいたい年間7万匹の猫が殺処分されていますが、そのうち約4万4,000匹が子猫です。産まれて1~2カ月たち、離乳の終わった子猫なら里親を探せますが、まだ乳離れできていない、へその緒がついた状態で持ち込まれた子は確実に殺処分となってしまいます。殺されるために産まれてくるような子があまりに多いんです。 代表の秋本真奈さん 秋本真奈氏(以下、秋本) 私たちはこの病院を始めるまで、動物愛護団体にいました。そこは、動物を保護して里親を見つけるところなのですが、次から次へと保護されてくるんです。里親に出せない性格や病気の子もたくさんいるので、頭数はどんどん増えていってしまいます。そこで「今、なにを急がないといけないか」と考えたら、殺されている子をこれ以上増やさないようにすべきだと、猫の不妊手術活動にたどり着きました。 ――猫が病院に持ち込まれる経緯には、どんな例がありますか? 安田 地域猫の世話をしている方やボランティアの方から依頼が来たら、まずはどんな場所に何匹いるのかなど、聞き取り調査をします。それから捕獲器を頭数分持って、餌をあげている時間帯に合わせて、うかがいます。捕獲器の中にエサを入れて設置しておくと、8割方捕まりますね。そこで捕まらなかった子は、用心深いのか臆病なのか、その子の性格に合わせて、あの手この手で罠を作ります。 秋本 1回失敗すると次は同じ手は使えませんから、捕獲のタイミングって、すごい緊張感があるんです。 安田 確保したら落ち着かせるために捕獲器を布でくるんで、病院に連れて帰ります。捕獲器の外から麻酔をかけて眠らせて、体重を量って、ケガをしている子がいたら手当てをして、ご希望の場合はワクチンを打ちます。不妊手術自体はオスで5分くらい、メスでも麻酔をかけてから覚醒するまで30分くらいです。一晩病院で預かって様子を見て、翌日同じ場所へ返しに行きます。 捕獲に使用する捕獲器。ほかにも数種類完備している。 ――手術も麻酔の時間も、ずいぶん短いんですね。 安田 低容量麻酔とはいっても、あまり体にいいものではないので、少ない量でかつ短時間で済ませたいんです。飼い猫ではなく、地域猫や野良猫が来るため、健康状態がわかりません。中には肝臓の悪い子も来ますから、なるべく負担の少ないようにしたいと思っています。そういう猫が、だいたい1日に20~30匹来ています。 次のページ 多岐にわたる猫トラブル 123次のページ Amazon 世界で一番美しい猫の図鑑 関連記事 「動物への愛情だけではない」ビジネスとして見る、“生体販売をやめたペットショップ”のあり方「ペットブームは嘘」減少たどる犬の飼育頭数、ペット産業が抱える“悪循環”のウラ側大阪にネコビルを作る意図とは? クラウドファンディングで資金集め中の猫カフェ社長に聞くミニ豚さえアクセサリー? パリス・ヒルトン、動物愛護団体に非難されるベラ・ソーンが「フェイクよ」とインスタに写真を投稿した毛皮が本物だと判明し、大炎上!