仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

オードリー・若林正恭、オリラジ・藤森への不快感に見る「意固地な上下関係」意識

2017/01/12 21:00

 トーク番組のエピソードは誇張があって当然。その真偽を探るのは無粋だが、芸能界のような数字が全ての世界では、スタッフが売れない人に注意を払う可能性は非常に低い。芸人に限らず、売れなかった時代、テレビ局に行く交通費にも困っていた芸能人が、売れたら高級車を買うケースもよく聞く。つまり、若林の変化は“大変よくあること”であり、スタッフの誰も気にも留めていないと私は思う。自意識の空回りと見ることもできるのだろうが、若林の場合、独特の“意固地さ”を感じるのだ。

 その“意固地さ”は『アメトーーク!』の同じく「マイナス思考芸人」の回によく表れていた。「理解できないこと」というお題に、若林は「現場に犬を連れてくる人」と回答。加藤浩次も、『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)で、仕事場に犬を連れてくる芸能人を批判したが、加藤と若林では、その理由がまったく異なる。加藤が「スタッフに余計な仕事をさせることになるから」と、周囲の負担を増やすことを批判の理由に挙げた一方、若林は「犬を仕事場に連れていって結果が出せなかったら、仕事に集中しろと批判されることは目に見えている。よっぽど自分に“自信”があるんだなと思い、自分には理解できない」と述べていた。つまり、若林が気にしているのは、自分と相手の力量の差、突き詰めると自分と相手の力はどちらが上か下かという“上下関係”といえるのではないだろうか。

 そう考えると、若林がランドクルーザーを乗っていることを知られたくない気持ちと、藤森に対してヘソを曲げた件が、つながってくる。若林が高級車に乗って「偉くなったと思われたくない」と感じてしまうのは、自分より“下”だと思っていた相手が、何らかのきっかけで高級車に乗っているのを、若林自身が苦々しく見つめた経験があるからではないだろうか。他人を批判的に見るから、自分もそう見られているに違いないと思い込み、その考えから逃れられなくなるということは、よくあることだ。「高級車に乗る自分は笑われているかもしれない」という思い込みがあるところに、自分より“下”だと思っている藤森がそこを突いてきたので、必要以上に不快に感じたように私には見える。

 「面倒くさいよな、あいつって」と藤森に対する不快感を露わにした若林だが、温和に見せて、上下にうるさいあなたも、かなりの面倒くささですよと申し上げたい。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの


最終更新:2017/01/12 21:00
蟹工船・党生活者 (新潮文庫)
「平成の小林多喜二」が面倒くさくないはずなかった