サイゾーウーマンカルチャー社会個人の生活に国家が介入する恐怖 カルチャー 『性と国家』発売記念・北原みのり×佐藤優トークイベントレポート 「産まない自由を強調していきたい」北原みのり×佐藤優が語る、国家に支配される性 2017/01/02 21:00 AV逮捕 ■個人の生活、生き方に国家が介入するのは危険 ーー大学でフェミニズムの授業をとったとき、「中絶は女性の権利である」と強調されたが、生まれてくる生命に対する切り捨てのように感じて違和感を覚えました。それについてどう思われますか? 北原 生殖の問題は、フェミニズムにおいても一大テーマです。女たちは産む産まないを自分で決めることができず、生涯ずっと産むしかない時代が何千年も続いてきました。だから20世紀になってウーマンリブやフェミニズムの観点から「産む産まないは、自分が決める」という考えが出てきたとき、どれだけ多くの女の人たちを動かしたか、それによって自分の人生を手に入れられた人がどれだけいたか……と考えると“中絶する権利”という言葉で簡単にまとめられるような話ではないと私は思います。 もちろん命の問題については、今後もあきらめずに言葉を尽くして考えていくべきことですが、現在は国が「中絶するな」「どんどん産んでください」と推し進めているところですよね。いつの時代においても、女の身体は国家に利用されてきて、生殖はその最たるもの。男性と女性とでは、そのことで感じる恐怖や身体感覚の度合いが、まったく違うのではないでしょうか。 佐藤 いまの政府が、少子高齢化対策としてできるだけ多くの子どもを産むことを奨励しているという文脈の中で、私は意図的に「産まない自由」を強調していきたい。産まない自由が担保されたうえで、少子高齢化を考えなければいけないということです。個人の生活、生き方に国家が介入するのは危険です。ひとりひとりの生殖に国家が口を出して、しかも生殖によって経済的利益を得られるというやり方は、私は国家の過剰介入だと見ています。 同書のイシューは沖縄、慰安婦、戦争、性売買、性暴力など多岐にわたっているが、上記で紹介したように、生殖をはじめとする私たちの身近にある問題ともつながっている。子育てや介護はなぜ女性の仕事とされるのか、街を歩いているだけで目に入ってくる児童ポルノ的な表現を異常と思うほうがおかしいのか、なぜドラマやCMなどを通じて女性蔑視的な視点に出くわさなければいけないのか……この違和感や不自由はすべて“国家”と切り離せないのだと気づかずにはいられない1冊である。 (三浦ゆえ) 前のページ12 最終更新:2017/01/04 19:11 Amazon 性と国家 男も産めたらいいのに 関連記事 女が産まない決断をする難しさ “負け犬”の生みの親・酒井順子が考える『子の無い人生』「精子バンクの商業化は多くの人たちの幸せにつながる」生殖医療の最前線の医師が語る、日本の家族観の問題点生殖と関係なくなったとしても女は女。他人に決められるいわれはない「私の“ご主人様”は私だった」神田つばきがSM、AV、性の冒険の果てに見つけたもの「この国は東電OLになった」北原みのり氏が語る、女性のセックス観の変遷 次の記事 伊野尾、本命彼女と破局危機に? >