猫トラブルの原因は「近隣住民同士のいさかい」――地域猫活動が浮き彫りにする、意外な問題点
■多岐にわたる猫トラブル
――“地域猫”という言葉がありましたが、野良猫とは違い、誰かに管理されているということでしょうか?
秋本 特定の飼い主を持たずに、地域で管理されている猫のことです。私たちのやっているTNR活動も、“地域猫活動”といわれています。猫が増えすぎたり、トラブルが起きないように猫との共存を考えていく活動です。よくある相談が、「猫が家の庭で排泄し、苦情になっている」というもの。そういう問題に対して、一つひとつ対応の仕方をお話していきます。
――その場合、どういう指導をするのでしょうか。
秋本 「ここで排泄してほしい」という敷地内に、猫が好む砂を使ったトイレを設置します。それで解決するかどうかはわかりませんが、まずはやってみましょうと。苦情を言ってこられた方には、消臭剤をプレゼントするなど、誠意のある対応をします。実際それで猫が来なくなることはあまりないと思いますが、意外とそれで解決したりするんです。
安田 猫のトラブルって、「もともと仲のよくない近隣の人が、猫に餌をやっているから気に入らない」といったように、実際は住民の方同士が揉めているケースが多いんです。それに猫が巻き込まれている感があります。心に余裕がないと、ちょっとフンをされただけでも許せなくなるみたいですね。ただ、人って、誰かから感謝されると、他人に対して寛容になるもの。真摯にお詫びをされると責めにくいものです。つまり人間関係が良くなると心が広くなります。猫に対して苦情を言っていた人でも、揉めていた人との関係が良好になるだけで、猫問題へのいら立ちが収まる場合は多いんです。それで、半分以上の猫問題が片付くんじゃないかと思うほどです。
――ほかに、どんな猫トラブルの例があるのでしょうか。
安田 地域猫に餌をやっている方のマナーも問題になりがちです。地域によって決まりは違うのですが、基本は「置き餌はしない」。自分が餌をやりに行くときは、その子が食べられる量をあげて、食べ終わるまで待ち、片付けて帰る。マンションの駐車場や駐輪場といった私有地であげないなどのマナーがあります。それを守れない人が多いようで、「餌をそのままにして帰る」という苦情が一番多いんですよね。必要以上の餌を放置して、カラスがたかっているとか、あちこちの猫が集まってくるとか。マナーがなっていないと、結局は猫のためにならないことを、餌やりさんが理解しないといけないんです。
――餌をやっている人たちは、自分の家で飼えないのでしょうか?
秋本 飼えないですね。まず捕まえられないですし、捕まえて家に入れたところで、地域猫とはいえ、野生です。簡単には人に慣れません。
安田 野生の猫を家に入れるリスクって、すごくあるんですよ。「外で暮らす猫は不幸だ」という考えで、どんどん家に入れる方もいるんですが、多頭飼いになることで、発症のリスクが高くなる病気もありますから、野生の猫が家の中で幸せに暮らせるとは思えないんです。猫は結構、自分でちゃんと餌を取れる動物。ゴミを漁ったりもしますが、ネズミや虫を捕って食べたりしています。生きていくための能力があるから、あまり過保護にして守りすぎるのもよくないのではないでしょうか。とはいえ、地域猫の適性数ってあると思うんです。今は頭数が多すぎるから、餌も足りないしトラブルにもなる。人間が見守るだけになれば理想かな、と思います。不妊手術の活動をしていると、よく言われるんですよ、「猫を絶滅させたいのか」って。決して、そうではないんです。絶滅なんてしてほしくないし、いつか猫が自分たちで餌を取って生きていけるような環境を作っていくのが目標です。