女性ファッション誌動向を甲南大学・栗田教授に聞く

モテ系・赤文字系が凋落、「mer」はヒット! 2016年の女性誌動向5大トピックを徹底分析

2017/01/02 16:00

 雑誌不況が叫ばれて数年、2016年も休刊や廃刊に至った女性誌がいくつもある。一方で、新創刊やリニューアルで話題を振りまいた女性誌も存在する。そんな今年の動向について、女性ファッション誌の研究歴20年、「新社会学研究」(16年創刊、新曜社)で「ファッション&パッション」のコラム連載も担当する甲南大学の栗田宣義教授に聞いた。

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「mer」(学研プラス)、「AneCan」(小学館)

■モテ系、赤文字系が凋落
――今年、最も印象的だった女性誌のトピックを教えてください。

栗田宣義氏(以下、栗田) 「AneCan」(07年創刊、小学館)の休刊は大きな出来事でした。「AneCan」は、「CanCam」(1981年創刊、小学館)を卒業したえびちゃん・もえちゃん雑誌。まさに2人のための媒体でした。一昨年にABC販売部数公査(以下、ABC公査)から離脱していますから、すでに1年前には休刊が決まっていたのでしょう。小学館は雑誌余命を伸ばしに伸ばして、10年間よく頑張りました。その意味では編集部の努力は称賛に値します。

 注目はその母体だった「CanCam」です。えびもえブームの06年当時、ABC公査で64万部が売れていたのが、10年後の今は6万8000部で、その10分の1。そうなってほしくはありませんが、「CanCam」がいよいよ最後を迎えたら、小学館は女性ファッション誌から撤退するのかもしれませんね。それとも、沽券にかけて守り抜くのか。

 「AneCan」休刊に先立つこの数年間、「egg」(大洋図書)「小悪魔ageha」(インフォレスト、現:主婦の友社)「姉ageha」(同)「Happie nuts」(インフォレスト、現:ネコ・パブリッシング)「BLENDA」(角川春樹事務所)「Ranzuki」(ぶんか社)といったギャル系雑誌の休刊が続いていました。一見、ギャル系はもう終わったのかな、とも思えるのですが、そのような逆風の中で「JELLY」(06年創刊、ぶんか社)は、日本雑誌協会JMPAによる印刷部数では、20万4,000部出ているのです。その値のおおよそ3分の2が、ABC公査に近似するので、実売でも13~14万部が売れていることになります。かつて、実売百万部を誇った「non-no」(71年創刊、集英社)が15万部に届かず、豪華な付録で他誌を圧倒する宝島社の旗艦誌「sweet」(99年創刊)や「SPRiNG」(96年創刊)でさえも、17万~20万部という状況下で13万部はすごい数字です。「CanCam」の2倍も売れているのですから。一方、赤文字系の老舗「JJ」(75年創刊、光文社)が6万6,000部、「ViVi」(83年創刊、講談社)は11万2,000部、「Ray」(88年創刊、主婦の友社)は6万部です。


 「小悪魔ageha」「姉ageha」が主婦の友社の支援を経て復刊されたことや、「JELLY」の好調を見ると、ギャル系の休刊は、乱立していた媒体が適正な数まで淘汰、整理されたのに過ぎず、その陰で、見えにくいのですが、むしろ、モテ系、赤文字系が次第に売れなくなってきたといえるでしょう。

『新社会学研究 2016年 第1号』