女だけどニューハーフバーで働いてみたレポート なぜお客さんにバレなかったか?
■千葉から働きに来ているキャストも
いよいよ私が働く日。いつもより濃いめにメイクして、ヘアセット専門の店でセットしてもらってから、お店に向かいました。お店の更衣室で自前のドレスに着替えて、すでに出勤しているキャストのコたちに「いちかです。よろしくお願いします」とご挨拶。座っていると、キャストの1人が私にお茶を持ってきてくれ、「あそこにあるソフトドリンクは、どれでも自由に飲んでイイんだよ」と教えてくれました。
その優しさに和んだ私は、出勤してきたキャストのコたちに「どうしてここのお店で働くことにしたんですか?」とか「どこから通ってるんですか?」とか、質問してみました。みんな、気さくに答えてくれました。「居心地がいいから」という回答が多くて、住んでいるところはバラバラ。中には「千葉のほうから、週末だけ働きに来ている」というコもいましたね。
また逆に、美容に関心が高いからだと思いますが「どこのメーカーの化粧品を使っているの?」とか、私が付けているまつ毛エクステについて「何mmの長さの、どういう種類のを付けているの?」とか、質問攻めされました。
それから、私が「自分は女性の体で生まれたけど、働かせてもらいに来ました」と言ったら、「お客さんにいちかちゃんのこと、女のコだよね? って言われたらどうしよう?」と聞かれたので、私は「みなさんがやりやすいように答えてもらって大丈夫ですよ。私自身はとりあえず何も言わないで働いて、聞かれたら無理に嘘つくつもりはなくて……その場のノリでいきます」と答えました。
■お客さんからは、女と思われなかった
営業開始時間になると、すぐに1組目のお客さんたちが来て、さっそく席につかせてもらうことに。席につくと「女のコだよね?」とは聞かれず、「クオリティ高いね」と言われ、私がニューハーフである前提で話し始めました。2組目のお客さんも同様でした。
2組目を見送ったあと、キャストの1人から「いちかちゃん、初出勤と思えないほど堂々としていて肝が据わっているよね」と褒めてもらいました。堂々としていたために、キャストたちから浮かず、お客さんから女のコだって思われなかったのではないでしょうか。
そして3組目、常連らしい3人組のお客さんだったのですが、そのうちの1人の男性客が私に「女のコだよね!?」と聞いてきたので、私は握った両手を顎の下に置いたぶりっ子ポーズで「はい、女のコですぅ~」と答えました。すると一緒にいた女性客が「女のコなわけないでしょ! (女のコなら)こんなポーズしないでしょ」と言い、男性客も「いや~女のコだと思ったよ。すごいねぇ」と言っていて、やはりここからは私がニューハーフという前提で話が進んでいきました。
4組目のお客さんは新規の男性2名でした。そのうちの1人から「聞いていいのかわからないけど……手術はしているの?」と聞かれました。「手術は……したことありません」と正直に答えると「そ、そっかホルモン注射だけか。ごめんね、聞いちゃって……」とかなり申し訳なさそうに言われたので、ちょっと胸が痛くなりましたが……そのまま会話が続いてしまいました。
結局この日、オーナーに紹介してもらった1人だけにしか、私が女という話をお客さんにしませんでした。