海外
誰も幸せにならなかった作品……

“『ラストタンゴ・イン・パリ』は本当にレイプだった”という報道は、メディアのミスリード?

2016/12/07 20:00

  そして、「マリアは生涯にわたり薬物依存に苦しめられた。自殺未遂もし、精神科病院に収容されたこともあった。この映画を撮影した時、彼女はまだ処女だった」という文字が流れ、マリアの晩年の写真と追悼の言葉が流れ、動画は終了する。

  イギリス版「Yahoo!映画」は、07年にマリアが英大手タブロイド「デイリーメール」のインタビューで、“バターを使った一連のシーン”について、「マーロンからレイプされたように感じた」と語った発言も紹介。「マーロンは、“マリア、心配しないで。ただの映画なんだから”って言ったの。マーロンは実際にはやっていなかった。でも、あの時の私の涙は本物だった」「正直に言うわ、ものすごい屈辱を味わったの。ちょっとレイプされたような気持ちにもなったわ。マーロンとベルトルッチの両者からね。あのシーンを撮影した後、マーロンは私を慰めなかったし、謝罪もしなかったわ。幸いなことに、ワンテイクで済んだけどね」というもので、マリアは実際にレイプされたとは認めていない。

  しかし、マリアは11年に亡くなっており、監督が「一連のシーンは、合意に基づくものではなかった」と認めた今、もうこのことについて真実を語ることはできない……と、「レイプされたのではないか」と示唆するようなニュアンスで記事は締めくくられている。

  この記事を受け、米大手エンターテインメント業界誌「Variety」が3日、「『ラストタンゴ・イン・パリ』のレイプシーンは合意のないものだった、ベルナルド・ベルトルッチ監督が認める」というタイトルで報道。同じく4日、米大手誌「Time」が「『ラストタンゴ・イン・パリ』の監督が物議を醸したバター・レイプシーンは、本当のレイプだったと認める」とツイートし、ネット上は大炎上。クリス・エヴァンズ、エヴァン・レイチェル・ウッド、エイヴァ・デュヴァーネイ、ジェナ・フィッシャーら、ハリウッドのスターたちがベルトルッチ監督とマーロンを非難するツイートを発信。女優ジェシカ・チャステインは、「この映画を愛するみなさんへ。あなたは19歳の若き女性が48歳の初老男性にレイプされている犯罪行為を見ているんですよ。監督はこのレイプを計画していたの。吐き気がするわ」と厳しく非難した。

 しかし、動画では、ベルトルッチ監督は「レイプした」とは認めておらず、「バターを使うことを知らせてなくて、彼女を怒らせてしまった」と明言している。また、「Yahoo!映画」で紹介されたマリアのインタビューだが、「マーロンは、“マリア、心配しないで。ただの映画なんだから”」と語る前に、「(バター)シーンは脚本にはなかったの。マーロンの思いつきだったのよ……撮影する直前にこうすると伝えられて、めちゃくちゃ怒ったわ。台本にないことは強要できないから、事務所か弁護士に連絡すべきだったんだけど、当時はそんなこと知らなくて」と説明。このインタビューで、マリアは「本当にセックスをしていたのではないか」というウワサについて「それはないわ」と断言していた。「マーロンは実際にはヤッてなかったけど、私の涙は本物だったわ」と語り、劇中のセックスシーンはアナルセックスも含め、全て“本番”じゃなかったと明かしていたのだ。

  この両者の発言から想像するところ、マリアは実際に性行為をさせられることはなかったが、心の準備もないのにいきなりバターをアナルにベタベタと塗られたため、そんなものを塗られるなんてという屈辱と怒り、本当にペニスを入れられるかもしれないという恐怖から、マーロンと監督を許せなくなったのだろう。まだ19歳で処女なら、なおさら「いきなり有無を言わさず、アナルにバターを塗られた」ことが汚らわしく感じたに違いない。

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