カルチャー
武蔵大学・千田有紀教授インタビュー(後編)

2016年炎上したポルノ的性表現の問題点 萌えキャラがなぜいけないのか? 

2016/12/06 15:00
千田有紀教授

(前編はこちら)

■チャイルドポルノ的な表現の問題

 炎上CMのなかには、ポルノ的な性表現が含まれるものもある。鹿児島県志布志市がふるさと納税を返礼品の養殖ウナギを用いてPRするために制作した「うなぎのうな子」動画は大いに物議をかもした。

「あれはそもそも炎上狙いだったと見ています。20歳を超えた女優さんを起用しているのも、チャイルドポルノ的という批判がくるのを見越していたからでしょう。そうやってインパクトを与えて注目を集めたかったけど、ここまで燃え上がることは予想していなかった。まして世界がこの“HENTAI NIPPON”的な動画をどう見るかは考えもしなかったのでしょう。自治体がこれを製作するのは、完全にアウトです。男性だけじゃなく、女性や子どもといったいろんな人の目に触れることへの配慮が欠如しています」

 ネット上では、未成年の監禁事件や家庭内での性暴力を連想させるといった指摘も多くあったが、一方で、これをポルノ的と見ることへの批判も巻き起こった。「いやらしいと見るほうが、いやらしい」ということらしい。

「着エロといわれるジャンルでは、スクール水着やリコーダーといった一見して性と縁遠そうなものが、定番の小道具としてポルノ表現に使われています。ときには未成年どころかローティーンの女の子がスクール水着を着用し、きわどいポーズをとるものも多く見られます。そういう世界が現実にあると知らない人にとっては、スクール水着=ポルノアイコンというのは奇異に思えるのでしょう。女性にはそういう人が少なくないのかもしれません」

 しかし一部の男性にとっては違います、と千田さんは続ける。

「チャイルドポルノ的な表現で興奮する嗜好をもった男性たちにとっては、この映像が批判されると、『俺たちのエロが奪われる!』と危機を覚えるのでしょう。性的嗜好はとてもパーソナルなものなので、これを否定されると傷つくし、自分の実存が揺らぎます。だから、過剰に反応するのです」

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