綾菜は、加藤茶との結婚でトクをしたのか? 『モシモノふたり』に見た“45歳年下妻”の孤独
別荘に宿泊した翌朝、夫人は起きてこない茶の寝息を聞いて生存確認をし、朝食のアジのヒモノはほぐしてご飯の上にのせてやる。完全に介護である。茶は割とわがままで、朝食を用意しても「パンが食べたい」と言い出して、急きょ夫人をパン屋に行かせたり、夫人の外見レベルを「下の中くらい」と言うそうだ。
一般論でいえば、孫ほど年の離れた若妻は、やりたい放題しても許されるイメージを持ちがちだが、実際の夫人は芸能人の妻という肩書や時々テレビに出ることと引き換えに、年寄りのわがままと介護を引き受けている。これがトクになっているのか、私には甚だ疑問だ。
結婚当時、23歳だった夫人も、28歳となった。茶は、自分がいなくなった後の夫人を心配しているようで、「やりたいことはないのか」と聞くが、夫人は短大を卒業して、就職活動を数カ月しただけで結婚してしまったので「ない」と答える。やりたいことは、実務の荒波にもまれることで生まれることも多いし、やりたいことを見つけたとして、それを維持するにも実務能力が必要なので、家庭に入っていた夫人に「将来の展望を持て」と迫るのも酷だろう。茶にもしものことがあったら、就職市場的な観点からすると、夫人はウリ(職歴、資格、若さ)のない求職者となってしまう。夫人は「ちーたん(茶のこと)いなくなったら、生きていけん」と言っているが、これは愛情表現というより、現実問題、生活が回らないという意味にも解釈できる。
そんな夫人を見ていて、今から男性芸能人専門の介護施設を立ち上げることを勧めたいと思った。茶の周辺にいる芸能人から、少し多めに金をもらって、プライバシーを重視した施設を作る。そこで働く女性たちの面接も、もちろん夫人が担当する。老人と接するのがイヤでないというのは、実は特殊能力である。介護施設でぜひドカンと当てていただきたい。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
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