カルチャー
興和サイン・高橋芳文代表インタビュー

歌舞伎町は「エンターテイメントシティ」化!? 看板から考える2020年東京の景観

2016/10/22 15:00

■外国人旅行者は、雑多な街並みを求めている

公益社団法人東京屋外広告協会会長賞を受賞した「I❤歌舞伎町」の看板

――東京都はオリンピックに向けて訪日外国人旅行者を増やすことを目標に掲げていますが、看板のデザインもクールジャパン的な流れになると思いますか?

高橋 現在、訪日外国人に人気なのは、新宿・歌舞伎町やゴールデン街など、大小の看板が無秩序に密集している風景です。猥雑な飲食街や、変なガードレールなどが人気で、「I❤歌舞伎町」やホストクラブの看板が密集している場所もフォトスポットになっているようです。自治体や広告代理店は、大型看板やデジタルサイネージ(電子看板)の導入を促進したいようですが、雑多な風景の方が外国人旅行者には人気がありますし、街並みとしても面白みがありますよね。

――最近の看板の傾向は?

高橋 デジタルサイネージは駅ナカや地下鉄のコンコースで増えてきましたが、看板は一瞬で目に入らないと意味がないんですね。移動中の人が見るものなので、動くデジタルサイネージは効果があるのか疑問です。それから、キャンペーン型でSNSを意識した広告看板が増えました。ぬいぐるみを柱巻きにしてSNS拡散を狙ったり、手持ちの顔出し看板も増えています。いずれにせよ看板の形態が変化しているので、今の街並みは、あと数年で見られなくなりますよ。

■失われてゆくネオン管サイン

――今後、看板の多様化は進むのでしょうか?

高橋 規制もどんどん厳しくなりますし、どうにか持ちこたえていた個人経営の店舗が次々と閉店しますから、今の光景は変わってしまいますね。ネオン管サインも職人がいないので、新規で作られることはほぼなく、今後LEDに取って代わられるでしょう。それに、高度経済成長時に建設されたビルの看板は老朽化していますから、安全面を考慮して取り外されることもあるでしょう。今は店の情報もネットで検索する時代だから、看板なんて店名さえわかればいい、と考えるオーナーさんもいます。だから今、目にしている風景は貴重なものなんですよ。僕はネオン管サインを見ると、必ず写真に収めています。

――ネット社会の中で、看板文化は衰退してしまうのでしょうか?

高橋 看板は都市のエネルギーですから、看板が少なくなると街が衰退しているように感じるので、まったくなくなることはないでしょう。世界最古の現存する広告は、トルコの古代遺跡エフェソスにある、娼婦の館の案内看板なんです。広告看板は古代から人間が慣れ親しんでいるものですし、全てがなくなるとは思いません。今後はSNSやネットと、どう共存するかが課題になりますね。香港では、看板が観光資源になっています。東京も、雑多な看板のある風景を街の個性として、生かしていけたらいいのではないでしょうか。
(松田美保)

興和サイン

最終更新:2016/10/22 15:00
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