「夫の浮気と姑の嫌味」を我慢するために――保守的な主婦が、婚外恋愛に溺れた理由
家庭を持っている女性が、家庭の外で恋愛を楽しむ――いわゆる“婚外恋愛”。その渦中にいる女性たちは、なぜか絶対に“不倫”という言葉を使わない。どちらの呼び名にも大差はない。パートナーがいるのにほかの男とセックスする、それを仰々しく “婚外恋愛”と言わなくても、別に“不倫”でいいんじゃない? しかしそこには、相手との間柄をどうしても“恋愛”だと思いたい、彼女たちの強い願望があるのだろう。
既婚者と婚外恋愛をする上で、最も気になってしまうのは、相手の配偶者の存在ではないだろうか? 何よりもまず相手の配偶者にライバル心を燃やしてしまうのは、女として当然の心理だろう。容姿、性格、愛する男とどうやって日常を過ごしているのか――既婚者との恋愛をしている女性で、配偶者の存在が気にならない人はいないはずだ。“嫁”が不甲斐ないからこそ、彼は浮気をする。不倫相手としては“嫁”に負けたくない――。そう思ってしまうのも当然だろうが、「でも、奥さんと直接会った時、『奥さんには敵わない』って思いましたね」と、今回お話を聞かせてくれた夏津さん(仮名)は自虐的な微笑を浮かべて、言った。
■「見知らぬ男にちやほやされるのがうれしかった」
すらりとした体形で、ノースリーブ姿がサマになる夏津さん。すっきりとした顔立ちとスタイルの良さは、とても40歳半ばとは思えないほど若々しい。その美貌を武器に、あらゆる男性を虜にしてきた百戦錬磨の女性では、と思ったのだが、彼女は意外と保守的な日常を送ってきたという。
夏津さんが結婚したのは、年若い20歳の頃であった。アルバイトをしていた地元のスナックでご主人と知り合い、数カ月後に妊娠、すぐに結婚を決めたそうだ。
「主人がたまたま高校時代の友達のいとこで、『これは運命だ!』と感じたんですよね。地域コミュニティが密な土地で生まれ育ったので、相手の家柄も知ることができましたし、『この人とだったら』と結婚を決めることができました」
夏津さんの夫は、地元の土地を多く有する家の息子だった。夏津さんは若くして、夫の両親と同居し、2人の子宝に恵まれた。
「結婚して10年間は、義父母と寝食をともにしてきました。同居ということもあり、義父母は私の家庭環境も知っていましたから『財産目当てでうちの息子と結婚したんじゃないの?』とは、ずっと言われていましたね。つらかったですけど……離婚はしたくありませんでした。私自身、詳しくは言えませんが、普通の家庭で育ってきたわけではなかったので、せめて子どもたちは『普通の家庭』で育てたかったんです」
複雑な家庭環境で育った夏津さんにとって、ご主人との結婚は、新しい人生を歩もうという“覚悟”を伴うものであった。
しかし結婚してから間もなく、夏津さんのご主人はしばしば浮気をすることになる。その都度喧嘩をし、仲直りを繰り返すこと10年、夏津さんはご主人以外の男性との恋愛を経験することになる。
「きっかけはネットですね。当時はまだ“出会い系”もない時代で、いわゆる雑談をするチャットがあって……もともと保守的な性格なので、知らない人と会話をして仲良くなることが新鮮だったし、女というだけで見知らぬ男の人がちやほやしてくれるのがうれしかったんです」
度重なる夫の浮気と姑からの圧力のストレスから逃げるように、夏津さんは婚外恋愛を繰り返すようになる。しかし、根本的な理由はほかにあったようだ。