ラブホ文化から見るカップルの姿

「忍者部屋やキッチン完備」「海外旅行者の観光地化」――日本の性愛空間“ラブホテル”はいま

2016/08/20 17:00
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Photo by Payton Chung from flickr

 恋人たちが“こっそり”と愛を育む場ラブホテル。1960年代、アメリカの「モーテル」が日本に輸入され、自動車のまま入る=人目に触れることなく入館できるという新しい宿泊施設のスタイルが確立、70年代には、「ラブホテル」という呼び方が一般的となり、その後、一般の旅館やホテルとは違う、テーマパーク的な趣向を凝らしたラブホテルが全国に広まった。

 しかし、近年ではそんなラブホテルに大変化が訪れているようだ。ラブホテルとは、言ってしまえばセックスをする場所であり、そこに足を踏み入れることは、後ろめたさや恥ずかしさを伴うものだが、その利用方法が多様化しているという。

 一体、ラブホテルは、どのような変化を遂げたのだろうか? また、現在ラブホテルとは、人々にとってどのような“場所”として位置付けられているのだろうか? ラブホテル文化の現在を探りながら、そこから浮き彫りになる人々のセックス観の変化までも掘り下げたい。

 第1弾の今回は、業界最王手のラブホテル・レジャーホテル 検索サイト「ハッピー・ホテル」を運営する株式会社アルメックスからの協力を得て、現在のラブホテル利用者事情を紐解いてみた。

■9年間で約800軒減少したラブホテル


 そもそも「ラブホテル」というものは、一体どういったホテルのことを指すのだろう? ラブホテルは、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)により、「専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む。以下この条において同じ。)の用に供する政令で定める施設(政令で定める構造又は設備を有する個室を設けるものに限る。)を設け、当該施設を当該宿泊に利用させる営業」と定義付けされている。平成23年に改定された風営法の詳細なラブホテル営業の改定ポイントを見ると、
・休憩料金の表示
・玄関やフロントを遮蔽
・自動精算機
・客室案内板
とあり、これらの設備がある場合、そこはラブホテルといわれるわけだが、まず大前提として、最も特徴的なのは、風営法の届け出を出しているホテルは、「18歳未満は入ることができない」点だろう。また、地方によく存在している、車に乗って誰にも会わずにそのまま入れるホテル、客室に精算機があったり、昔で言うとエアシューターで清算するのも、ラブホテルの特徴としてイメージしやすい。

 しかし、風営法においてラブホテルに当てはまらず、「旅館業法」のみで営業されているホテルも、一般的にいわゆる「ラブホテル」と呼ばれることがあるという。アルメックスの担当者は、この事情について次のように語る。

「弊社ではいわゆるラブホテルを『レジャーホテル』と呼んでいます。セックスだけではなく、遊んだり、ご飯を食べたり、お酒やカラオケ、大きなスクリーンで映画を楽しむような『レジャー』利用の場として提供しているホテルも増えていると感じます」

 では実際に、現在ラブホテルはどのくらいの件数があるのだろう? 都道府県別のラブホテル軒数を見ると、1位が東京都で673軒、2位が大阪府で446軒、3位が埼玉県で322軒と、やはり大都市圏に集中しているものの、全国での軒数は減少傾向にあるようだ。「ハッピー・ホテル」がサービスを開始した2007年は約7,700軒掲載していたラブホテルが9年後の16年現在では6,900軒まで減少。よって、現在では新規オープンをするということはあまりなく、老朽化したラブホテルをリニューアルして使う、という事が一般的なようだ。

「新築で建つことがほとんどありませんね。リニューアルして存続しているホテルが多く、ラブホテルが増えたといえる特化した地域はないと思います。ただ、新しいホテルが建つとしたら、東京ですね。雑居ビルをリノベーションしてホラブホテルとしてオープンするところもありますが、年間何軒も建つようなものではありません」(同)


 ラブホテル自体の軒数が減少しているということは同時に、利用者数も減少傾向にあるわけだが、その原因は「少子高齢化」(同)だという。現在ラブホテルを利用している人々の平均年齢層は、20~30代のカップルがメインで、それは「昔から変わらない」(同)そうである。しかし、詳しく見ていくと、平日の昼間の7割近くは、いわゆる年配者の「不倫カップル」の利用も多く、地方によっては社用車での利用も見かけるというから驚きだ。

■最近の人気は“コンセプトルーム”

 では、ラブホテルの“つくり”のついての変化はどうだろう? いわゆる昭和時代に建てられたラブホテルは、外観も客船や城を模倣した突飛なものだったり、その内装も鏡が多用されていたり、回転式や貝殻の形のベッドがあったり、室内にメリーゴーランドがあったり……と、どこかテーマパーク的な要素が強かった。しかし、こうした、ひと昔前のラブホテルは減少し、外観、内装共に一般的なシティホテルやビジネスホテルなどとあまり差がなくなってきているとも聞くが……。

「確かに一時は、シティホテルのようにシンプルな内装が多く、あまりラブホテルらしくない内装が人気でしたが、ごく最近は『コンセプトルーム』という形で、学校のように机が置いてあったり、体育館風だったりと、一部屋ごとに異なるコンセプトのある部屋を作っているホテルも出てきました。全部屋ではないけれど、例えば部屋が真っ赤とか、ちょっとした遊びを取り入れた部屋を作っているホテルもあります」(同)

 東京・錦糸町で昨年リニューアルオープンした「HOTEL SARA」は「ハッピー・ホテル」の会員に「どういう部屋を作って欲しいか」をリサーチ。「忍者部屋」や「キッチンがある部屋」など、さまざまなコンセプトルームを持つ部屋が生まれ、「HOTEL SARA」は人気ホテルの1つになっているという。

『日本昭和ラブホテル大全(タツミムック)』