コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

ASKAブログ、薬物芸能人として致命的な“上から目線”――許してもらうべき人物は誰なのか?

2016/07/28 21:00

 「許してもらう」――ASKAにとって、その必要がある人物は、ASKA夫人だろう。夫が薬物で逮捕というだけでもショッキングだが、ASKAの場合、一般人女性との不倫が加わる。裁判の際も不倫相手の女性を「大切な存在」と語るなど、ASKA夫人は公衆の面前で女性としてのプライドを踏み潰された。

 しかし、ブログにおいて、ASKAは妻に謝罪をしていない(子どもには愛しているとつづっているが、妻はそこに含まれていない)。その代わり、ASKAは「母」というタイトルで、幼い頃の厳しかった母の思い出も含めて、その思いをつづっている。

 ASKAは顔を見たがる母親のため、「一か月に一回は帰っていらっしゃい」の言いつけを忠実に守っているそうだ。父親に「母さんが元気なうちにオマエのうたう姿を見せてやれ」と言われたが、母親は現在闘病中ということもあり、「やがて、囲いから解き放たれ、僕が無心に歌を歌っている時、母はそれをどこで見ているのだろう」と、残された時間の無さを焦っているように感じられる表現でブログを結んでいる。

 一般的には、美しい母への愛と解釈されるのだろうが、母親にはひたすら“従順”な姿勢に違和を感じずにいられない。母親に尽くす前に、妻に謝る方が先なのではないだろうか。

 ASKAの妻に限らず、日本の“妻”は旨みが少ないと思うことがある。「妻を女として見られない」という発言が公の場でまかりとおる一方で、不倫や犯罪など夫の不祥事は、妻が謝るのが当然とされている。では、妻が旨みを取り返す法、それは息子を持つことなのではないだろうか。

 例えば、バイオリニストの高嶋ちさ子が、東京新聞のコラムにおいて、子どもが宿題や習い事の練習をしなかったので、ゲーム機を手でバキバキにしたと書いたことから、虐待疑惑が持ち上がり、Twitterが炎上した。しかし高嶋は、『白熱ライブ ビビット』(TBS系)で、「(息子たちが自分を)好きで好きでたまらないというのが身に染みてわかる」「こんなに男の人に愛されたことないって幸せはありますよ」と語っていた。日本においての一番利率の高い愛の単位は「夫と妻」ではなくて、「母と息子」なのだろう。

 ASKAに話を戻そう。ASKAは復帰を焦っているようだが、コンプライアンスの点から考えると、スムーズにいくとは考えにくい。変にストレスを溜めると、余計な欲求が湧いてこないとも限らない。執行猶予とは無罪ではない。妻の言うことをよく聞いて、心身を万全にする方が、結果的に母親の喜ぶ結果を出せると思うのだが。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、また8月2日に『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)発売予定。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2016/08/01 16:46
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