30歳で時価総額1兆円! “女性版スティーブ・ジョブズ”のまやかし【醜聞・世界の女性大富豪】
こうして2014年には、雪だるま式に増えていった投資によって、セラノス社の時価総額は90億ドル(約1兆円)にまで達した。経済誌「フォーブス」は、エリザベスを全米で最も資産を持っている起業家と紹介。全世界起業家ランキングでは8位に食い込んだ。ベスト10のうち8人を中国人が占める中での快挙だった。
しかし、セラノス社はあっけなく崩壊する。
■「女を利用したサギ」の罵声も
盛り上げたのもマスコミなら、はしごを外したのもマスコミだ。経済新聞「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、セラノス社による血液検査や実験データの改ざん、検査キットの精度に問題があることを指摘。政府機関が調査に乗り出した。
裁判に発展するかも、と思われた矢先の6月初旬、保健社会福祉省はセラノス社に対して営業免許の取り消しや、エリザベスの就業禁止などの厳しい措置を取る可能性を示唆。
これを受けて、富豪ランキングを発表して煽り立てた当の「フォーブス」は、さっそく今度はセラノスの評価額を90億ドル(約1兆円)から8億ドル(約890億円)へとランクダウンさせた。加えて「投資家たちが資金を引き揚げたら、エリザベスは無一文になる可能性も」と予測。世論は一気に反転、逆流した。
エリザベスはいま「Scam Artist」(芸術的サギ師)と呼ばれ、SNSやニュースサイトでも叩かれまくっている。「女を利用したサギ」(A Girl‐Powered Scam)という言葉も躍る。
頂点から奈落に落ちるリケジョの姿は、どこか小保方晴子氏とも重なる。白衣と黒ハイネックの違いはあるが、清楚な装いとさりげないエロス、革新的技術とその欺瞞。
手記などで世間に反論した小保方氏のように、エリザベスはなんらかのアクションを起こすのだろうか? 本人のTwitterも沈黙したままだ。
(室橋裕和)