少年Aも小保方晴子も、アラサーちゃんもタラレバ娘も 自分語りが好きな「名前のない世代」
■同世代の女性は、そこまで自虐的にならないでほしい
古谷経衡氏
古谷 僕もそうです。モテたい、注目されたい。ルサンチマンとコンプレックスの塊です。それは認めざるを得ない。不特定多数の人に開陳する方が、82年生まれのスタンダードなのでしょうか?
佐藤 そうだと思います。それが必ずしも悪いわけではないのですが、あまりにそういう人が多い。峰なゆかさんの『アラサーちゃん』(メディアファクトリー)や東村アキコさんの『東京タラレバ娘』(講談社)は、僕たちの世代の女性をうまく表していますよね。アラサー女子なら誰もが「あるある!」とうなずくようなリアルなストーリーなのですが、やはり“自分語り”なんですよね。この世代を描くには、“自分語り”を抜きにしては語れないのかなと思います。
古谷 僕も、どちらの作品も大好きです。『東京タラレバ娘』に関しては、個人的にKEY君といういけ好かないイケメンが大嫌いですが、大嫌いということは好きなんですね。ルサンチマンと嫉妬の裏返しですね。名作ですよ。
佐藤 天才が描いた“自分語り”だと思うんです。「読み進めると思い当たるところがあって、つらいけれど、すごくわかる」と共感する作品です。もちろんフィクションですし、エンタメ作品なので、本当に醜い現実を見せつけるものではありません。でも、実際の30代前半の女性たちは、もっとしんどい立場に置かれていて、心底つらいと感じているのかもしれない。
古谷 特に今30代前半の女性だと、結婚する・しない、出産する・しない、キャリア志向、仕事にそこまで重きを置かない、趣味に没頭するなど、いろいろな境遇の人がいすぎますよね。
佐藤 女性の方が男性よりも、世間からの強い風にさらされるのだろうと思います。残念ながら現実問題として、日本はまだ男女の賃金格差も大きいですし、若い女性にばかり価値を見出す風潮がハッキリしているので……。
古谷 同世代の女性に対しては、そこまで自虐的にならないでほしいとは思います。若けりゃいいってものでもないし、僕は個人的に年上好きなので。女性の黄金期は40代であると勝手に思っとります。
佐藤 年を重ねる良さもありますよね。僕も古谷さんも含め、いろんな意味で、我々の世代は、これからが本当の勝負なんだと思います。
(構成・高田晶子)
佐藤喬(さとう・たかし)
1983年生まれ。フリーランスの編集者。著書に『1982 名前のない世代』(宝島社)、『エスケープ 2014年全日本選手権ロードレース』(辰巳出版)。編集作は『無所属女子の外交術』(はあちゅう著、KADOKAWA)、『栗村修の……』シリーズ(洋泉社)、『敗北のない競技』(土井雪広著、東京書籍)など多数。
古谷経衡(ふるや・つねひら)
1982年、札幌市生まれ。文筆家。NPO法人江東映像文化事業団理事長。立命館大学文学部史学科卒。ネットと「保守」、マスコミ問題、またアニメ評論などのテーマで執筆活動を展開する。著書に『左翼も右翼もウソばかり』(新潮新書)、『若者は本当に右傾化しているのか』(アスペクト)、『愛国ってなんだ』(PHP新書)など。最新刊は『ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったのか』(コアマガジン)。